(上記動画のスクリプトを元に再構成したブログ版です)
今回からは「分かりやすいスライド作成・プレゼンテーションを学ぶ」をテーマに読書を進めていきます。現時点で概ね20冊程度は目を通せたので、おススメ書籍を抜粋した紹介していきたいと思います。
まず紹介するのは「分かりやすい表現の技術」です。1999年初版ながら2020年に新装されており、ロングセラーと言える一冊です。
知りませんでしたが好評のためか漫画版も出ていたようです。
機械やソフトウェアの取り扱い説明書をみたとき「何が書いてあるのかよくわからない」「知りたいことがどこにあるのか迷子だ」そんなことはありませんか?
私は普段こういった分かりにくい説明書をみると憤慨したくなるタイプなのですが、ではどこが問題で、どうすれば分かり易くなるのか。そのための視点を養えるのがこの本です。
目次
第1章 「分かりにくい表現」が一杯!
第2章 「分かりやすい」とはどういうことか
第3章 「分かりにくい表現」の主犯たち
第4章 「分かりやすい表現」のルールブック
では、目次をみていきましょう。第1章では「わかりにくい表現」の代表的な例を眺めていきます。日常的にもよく見る機械のマニュアルや看板・標識などが多く挙がっており、「あー、これはわかりにくい」とものすごく納得できます。第2章では逆に「わかりやすい」とはどういうことなのか、認知的な観点から解説されます。続いて3章からが本題ですが、なぜ表現がわかりにくくなるのか、16の原因を提示し、その詳細に迫ります。4章はその原因を考慮して作られたチェックポイントを提案し、実際に使えるようにします。
続いて内容のおすすめポイントとそうでないポイントをみていきます。
オススメポイントとオススメしにくいポイント
まず、この本のおすすめポイントですが「分かりやすい、を評価する視点をたくさん持てる」という点です。
この本において「分かりやすい」というのは、情報をうまく整理した形にすることで、その内容が聞く人の頭の中にすっと整った形で入ることを指します。
情報をうまく整理する、と一言で言うと簡単そうに聞こえます。しかし、そのためには相手の気持ちに立つことを大前提とし、相手側の背景知識や理解のプロセス、そして情報そのものの全体像、分類やサイズ、など受け手と情報の両面において、多くのことを考慮しなければなりません。16の原因というと煩雑に感じますが、それだけ多様な視点を説明してくれている分、しっかりと「分かりやすい」にうるさくなれるのがこの本の良い点です。
本文を読むとわかるのですが、筆者はどうやら常日頃からこの分かりにくい表現を探し、それを適切に修正しようとしているようで、実例とその改善例の納得感はかなり強いです。特に説明書や案内版などの日常的な例が多いので、背景知識がなくても改善例の意味を誰でも理解できるという点は大きなメリットですね。
1999年に初版という比較的古い本にはなりますが、人間が文字や図を見て理解する仕組みというのは大きく変わるものではありませんので、知識として古い感じは全くしません。逆に2020年に新装されるということは長く読み継がれる信頼性が高いものであると言えます。
続いておすすめしにくいポイントですが、具体例の主体がマニュアルや案内板、書類に偏っているという点です。内容としてはパワーポイントのプレゼンテーションやアカデミア向けの資料作りにも応用できますが、具体例からは少し離れます。特にマニュアルや案内板の特徴として、情報発信が受け身であり、積極的に伝えたい強いメッセージ性があるものではありません。「見た人が必要なところをぱっと探して、見る」というのがマニュアルや案内板の特徴です。その意味では昨今機会が圧倒的に増えているプレゼンテーションとは特徴が異なります。プレゼンではストーリー性をもってメッセージを強くプッシュする必要がある、という点で少しやり方が異なると言えます。
まとめ
まとめです。「分かりやすい」にうるさくなれる複数の視点をきっちり説明した一冊です。16のルールはちょっと多いですが、一つずつ確認して守るだけでも内容が絶対分かりやすくなります。特にマニュアル整備をする人には是非とも読んでいただきたいと思います。
さて、この本の立ち位置ですが、理論も立てつつ、実用例も多く含まれており、一冊でもバランスのよいタイプとなっています。しかしながらその例には偏りがあるので、役立てたい方向によっては応用が必要です。非常に平易で分かり易い例が多いので入門者向けと言えます。
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