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論文のデータや図表をブログに引用する際の注意

昨日は著作権に関する本を紹介しました。医学系のブログで論文の図や表、データなどが貼り付けられつつ、まとめられている記事をよく見るのですが、前々から疑問だったのは「これって著作権的によいのか?」という点です。医学に限らず論文・書籍などの図表・データを載せることはどうなのか。この本を使いつつ考えてみます。

 

目次:

 

 

原則的には引用は許可不要、転載・複製は許可が必要

まず大原則ですが、著作物に対して「引用」は許可なく可能ですが「転載」や「複製」は許可が必要です。これはネットでもよくまとめてある話なので情報発信系のブログを始める前に必ず知っておく話だと思います。

 

これらの違いは何かというと、基本的に著作物をそのままコピーしてブログに載せる行為(「転載」「複製」)は著作権の侵害に当たります。ですが、それを常に全て適用していると、議論もなにもできたものではないので、例外として「引用」の場合にはそれが適応されません。

 

「引用」の基本は以下の4点になります。

(注5)引用における注意事項

 他人の著作物を自分の著作物の中に取り込む場合,すなわち引用を行う場合,一般的には,以下の事項に注意しなければなりません。

  • (1)他人の著作物を引用する必然性があること。
  • (2)かぎ括弧をつけるなど,自分の著作物と引用部分とが区別されていること。
  • (3)自分の著作物と引用する著作物との主従関係が明確であること(自分の著作物が主体)。
  • (4)出所の明示がなされていること。(第48条)
    (参照:最判昭和55年3月28日 「パロディー事件」)

(著作物が自由に使える場合 | 文化庁HP より引用)

 

実際に文化庁のHPより引用してみました。このように”引用”部分を明確に分けることは(2)を満たします。この記事の大部分は、自分の言葉で書いており、文化庁HPからの文章ではないので(3)を満たします。(4)は上に明示しました。(1)は基準がなかなか難しいと思うのですが、要するに「その著作物」以外のもので使えるのかどうかという点です。例えば建物の写真を無断で使った場合、それを自分で撮った写真ではいけなくて、「その引用してきた写真」じゃないといけない必然性があるかどうかということになります。

 

「複製」「転載」は逆に言うと上記の条件を満たさないことになるので、コピーしてきた文章が大半を占めるような記事はダメということになります。

 

「翻案」とは?

自分の言葉でまとめたものであっても注意が必要なのは「翻案」です。これも著作権侵害(同一性保持権の侵害)となるので知っておかないといけません。「翻案」とは何かというと著作物の考えが直接的に感じ取れるような範囲で内容を改変する行為です。より明確な言葉で示すと、、これも引用させていただきます。

著作物の翻案(同法27条)とは、既存の著作物に依拠し、かつ、その表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ、具体的表現に修正、増減、変更などを加えて、新たに思想または感情を創作的に表現することにより、これに接する者が既存の著作物の方現状の本質的な特徴を直接感得することのできる別の著作物を創作する行為をいいます(最高裁平成13年6月28日「江差追分事件」判決)

(医療従事者のギモンに答える!トラブルに巻き込まれない著作権のキホン 服部誠著p.5より引用)

 

つまり若干手を加えて、ほぼ同じようなことをくみ取れるような内容はダメということですね。なので記事や論文を自分の意見や他の考えを入れずに、ただ要約しただけのものなどもアウトということになります。線引きが難しい話ですが。 

 

グラフやデータにそもそも著作権があるか

著作物というのは「『思想又は感情』を表現したものであること」(著作物について | 文化庁より引用)とされています。実験で集められるデータというのは自然現象の記録であるため著作物には当てはまらないと考えられます。著作物ではないのであれば、「転載」だろうが「複製」だろうが何でもありか、、、と思ったら間違いです。これらのデータのまとめ方によってはある種の思想が入り込む余地はありますし、著作物にあてはまる創作性がある可能性があります。この辺がどこまでが許されるのかは専門家でないので明言できませんが、ただのデータとはいえ、特に医学論文の場合、相当な労力と費用がかかっているのは間違いないことで、それを勝手に「転載」されるのはどうかと言われると、反感を買う場合は十分あるでしょう。

 

主要ジャーナルであればNEJMは転載許諾を日本語版でもホームページに記載しています。

転載許諾 | The New England Journal of Medicine(日本国内版)

どうしても必要な場合は問い合わせるのが無難かなと思います。まあ、ブログの場合はそこまでして載せることもないでしょうけども。

 

結局ブログについてはどうなのか

主に自分の意見を述べたうえで、「引用」 するのはOK。たとえ言葉が違っていても内容要約のみにとどまるものや自分の言葉が少ない場合、図表を勝手に変えたり、追加したりして使ったりするのもアウトということですね。

 

以前書いた「医学論文から統計を勉強してみよう」という記事で本当は論文の図表を使って説明したい気持ちがあったのですが、「著作権的にどうなんだ?」と思ってやめました。

medibook.hatenablog.com

 引用の範疇に入ると考えればOKな気もしますが、この内容を語るのにこの論文である必然性があるのかどうかとか色々考えると自信がもてなくなるので避けました。今度記事を書くときは自分でそれっぽい適当な図表を書いてやるようにしようかなと思います。

 

参考文献:

医療従事者のギモンに答える!トラブルに巻き込まれない著作権のキホン

医療従事者のギモンに答える!トラブルに巻き込まれない著作権のキホン

  • 作者:服部 誠
  • 発売日: 2018/03/14
  • メディア: 単行本
 

昨日紹介した本ですが、上記の話に当てはまる判例や細かい権利の解釈なども触れられており、おすすめです。

 

・文化庁ホームページ

 政策について→著作権、のあたりに情報がまとめてあります。プライバシーポリシーなども、お手本の如く きちんと書かれているので参考になります。

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