REGN-COV2067試験(抗体カクテル療法、治療)についての追記

更新頻度落とすと言っておきながら、気になる抗体カクテル療法の試験についてのプレプリント論文が出されていたので思わず記事書いてしまいました。全然気づきませんでしたが結構前からあったんですね。

 

以前に予防投与とプレスリリースの情報を記載した抗体カクテル療法の話です。

medibook.hatenablog.com

 

プレプリントとして出されたのはこちらの論文になります。

REGEN-COV Antibody Cocktail Clinical Outcomes Study in Covid-19 Outpatients | medRxiv

Supplemental appendixはこちら

REGEN-COV Antibody Cocktail Clinical Outcomes Study in Covid-19 Outpatients | medRxiv

Clinical trialsによる試験の登録情報はこちら、簡潔にまとめてあります。

Safety, Tolerability, and Efficacy of Anti-Spike (S) SARS-CoV-2 Monoclonal Antibodies for the Treatment of Ambulatory Adult and Pediatric Patients With COVID-19 – Full Text View – ClinicalTrials.gov

 

目次:

 

 PICOによる概要

さて、論文化されたのでPICOから順番に改めて概要を見てみます。

 

試験の形式としては多施設共同の二重盲検試験で、参加国としてはアメリカ、チリ、メキシコ(主にはアメリカですが)となっています。

 

P:

・18歳以上、入院していない患者

・SARS-CoV2が検査で陽性かつ発症72時間以内

・リスク因子が1つ以上含まれる

(50歳以上、BMI30以上の肥満、高血圧を含む心血管疾患、COPDor喘息、糖尿病、CKD、慢性肝疾患、免疫低下)

 

なお、除外基準として大まかには

・ランダム化の時点で入院となった患者

・他の治験薬を含めた治療薬を受ける予定のある患者

ワクチン接種後あるいは接種予定の患者

となっています。

 

Clinical trialsのページにおけるkey inclusion/ exclusion criteriaに簡潔にまとめてあります。

 

ワクチン接種者が含まれていない、というのは今現在での効果を考える上で大きな違いになると思われますが、また後述します。

 

I:

REGEN-COV1200mg or 2400mg

C:

プラセボ

 

O:

Primary outcomeは29日間における1回以上の入院または死亡の複合エンドポイント

 

入院の基準については明確な記載が見つけられませんでした。

 

なお、割付は盲検化されていますが、調査者やデータ解析には薬剤の開発元であるRegeneronが関係しています。(COI)

 

試験の結果

被験者の概要

Figure1に振り分け人数と流れが記載されています。

 

もともとはリスクなし+リスク因子ありの患者がinclusionであり、この時は2400mgと8000mgの二群が介入群でした。その後、その中でリスク因子ありの2400mgのものだけが抽出されるという特殊な形になっています。

 

その後延長された試験内容において1200mg、2400mgの二群が介入群とされ、リスク因子ありの患者のみがinclusionとなったようです。

 

よって、1200mg群よりも2400mg群が最も多くなっています。

 

プラセボ群:1341名

1200mg群:736名

2400mg群:1355名

が最終的な解析対象となりました。

 

続いてTable1.にはpatients characteristicsが記載されています。

 

年齢の中央値は48−50歳となっており、65歳以上は10−15%と比較的少数です。

 

アジアの人種はいずれも3−5%とどうしても低いですね。

 

BMIは平均31と日本とは少し乖離が見られています。

 

BMI、年齢はリスク因子に含まれてますので、特に数値が高くなりやすい傾向はあるでしょう。

 

Primary outcome

これは以前のプレスリリースのものとほぼ同じです。

 

1200mg群 vs placeboで

1.0% vs 3.2% p<0.0024

 

ここから計算すると

ARRは2.2%、NNT45

 

2400mg群 vs placeboで

1.3% vs 4.6% p<0.0001

 

ARR 3.3%、NNT30

 

となります。

 

論文内には相対リスク減少とその95%CIしか記載ないですが、イベント数が少ないためミスリードになりがちです。ARRをきちんと計算するのが良いでしょう。

 

また、前に書いたようにあくまで複合エンドポイントなので死亡がどれだけ減ったかの方が重要なように思われます。

Secondary outcome(一部)

まず、気になる点として複合エンドポイントの内訳です。入院と死亡では大きく意味合いが異なります。

 

Supplementary appendixにある死亡のみのアウトカム(Table S6.)を見ると

f:id:medibook:20210731082431j:plain

(REGEN-COV Antibody Cocktail Clinical Outcomes Study in Covid-19 Outpatients | medRxivより引用)

 

プレスリリースの通り、死亡については有意差がなかったことがわかります。

実数がかなり少ないため(相対リスク減少の) 95%信頼区間も幅がめちゃくちゃに大きいです。 

 

続いて、人工呼吸器使用やICU入室はどうか見てみます。

f:id:medibook:20210731082754j:plain

(同supplementary appendixより引用)

 

ICU入室についてはより人数の多い2400mg群で有意差が出ていますが、ICU入室の1200mg群、そして人工呼吸器使用については有意差が出ていません。死亡と同様に実数がかなり少ないこともわかります。

 

抗体カクテル療法は死亡を減らせるか

複合エンドポイントであるが故に、この点が一般に伝わりにくいのは問題ですが、今回の試験の結果からは「死亡を減らせるかどうかは分からない」という結論しか導き出せません。

 

1000人以上の規模の試験でこれですから、今後も検証することは困難かと思われます。

 

加えて、前述したようにこの試験はワクチン接種者は含まれていませんし、試験の時期も2020/6~2021/6となっています。

 

現在の日本の状況においてワクチン接種率の増加や死亡率が低下していること(ウイルスの変異かワクチンの効果かはさておき)を考えると死亡に関しての効果が得られる見込みはなおさら下がります。

 

これは重症化の観点においても同様と思われますし、ICU入室、呼吸器管理においても十分なアウトカムが得られていないところを見ると、効果の恩恵は薄くなってしまうと言わざるを得ないのではないでしょうか。

 

とはいえ、今回の試験、予防投与の試験のいずれもアウトカムを問わず全体に投与群で経過が良い傾向があるところを見ると当然効果はあるのでしょうが、程度の問題というところですね。

 

また、2400mg群の一部は初め組まれていた予定と異なる形で試験が組みなおされ(リスク因子がある群のみを対象として)後付けな部分がある点も気にかかります。

 

現在の日本の状況でどうなのか、が最も重要なので国内第3相試験をやるべきであったというのは、その通りであるかなと感じます。

 

今後は事後的な解析データしか得られないわけですが、それでもデータを集めて現場での判断で有効性を検証していくしかないでしょう。少なくとも今回の試験通りのデータを実臨床に応用するには①重症化率、死亡率の変動、ワクチンの影響と②そもそも重症化を防ぐ十分な差がついてはいない、という点が問題となると思われます。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

CAPTCHA


日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)