明けましておめでとうございます。
何だかんだと言いながら伸びに伸びての久々の更新となりました(汗)
ちょっとずつ骨のある記事を書くよう今年は精進して参ります。
早速専門領域の話についてまずやっていきます。
一般的には狂牛病の名前で有名になったクロイツフェルトヤコブ病ですね。
孤発性は時折みるので一度まとめてみました。
中でも非典型的なMV2型についてまとめてます。
◇CJDの型
プリオン病の大きな分類として
孤発性(sporadic)、遺伝性(genetic)、獲得性(acquired)に
分けられる
sCJD、gCJDなどの略され方をする
医原性を含めたvCJD(variant CJD 変異型CJD)は獲得性の中に
分類される
最多を占めるのは孤発性
◇sCJD(孤発性CJD)の型
全部で6タイプ
異常プリオン蛋白の特徴によって分類している
臨床病型とも関連する
プリオン蛋白(Prion protein; PrP)は動物の細胞膜に
存在する糖蛋白
プリオン蛋白の異常(凝集を促すscrapie formとなる)が原因となる
原因となったプリオン蛋白をプロテアーゼ分解したときに
出てくる断片が21kDのものを1型、19kDのものを2型としている
さらにコドン129のM(メチオニン)とVの組み合わせで
2✖️3の6通りに分類する
ちなみに日本人sCJDの96.8%はMM
◇型による特徴
MM1、MV1が古典型
70%ほどを占める
古典型はいわゆるCJDらしい特徴を兼ね備える
検査所見として
周期性同期性放電(Periodic synchronous discharge: PSD)
14ー3ー3蛋白、タウ蛋白
臨床所見として
進行性認知症、錐体路・錐体外路徴候、無動無言、小脳症候・視覚異常、ミオクローヌスなど
急性経過で進行し亡くなる
他の型は非典型的な経過があり診断が難しい
診断基準はあくまで古典型に準拠しているため
他の型だと当てはまらないことがある
◇MRI所見
大脳皮質、基底核(被殻、尾状核が多い)、大脳白質に
DWI, FLAIR, T2 highとなる病変を認める
左右非対称となることが多い
特に大脳皮質、基底核の両方に異常がある場合はCJDを疑う
日本における症例では大脳白質にも異常信号が生じていることがある
異常所見の出やすさはDWI > FLAIR > T2の順
と、ここまでがsCJD古典型における特徴
MV2はどんな特徴的な所見があるのか
以下の論文を参考にまとめてみた
“Clinical findings and diagnostic tests in the MV2 subtype of sporadic CJD”
病理学的にCJDの確定診断のとれたもののうち
26名のMV2型について調べた観察研究です
◇MV2型の頻度
sCJDの9%ほどとされている
診断が困難な理由として
数自体が少ないことの他に
CJDとしては比較的緩徐に進行すること(生存1年以上の場合も)
非典型的な臨床経過を辿ること
が挙げられている
◇MV2型の臨床所見
認知症(n=10)、失調(n=9)が初発症状として最も多かった
かつ経過中に全患者で認められた
視覚異常(n=2)が初発症状の患者もいた
→過去の報告では視覚異常は指摘がなかった
他の典型的症状(錐体路・錐体外路徴候、無動無言、視覚異常、ミオクローヌスなど)は6-9.5ヶ月の間で認められた
それぞれの症状のあった患者数の割合は以下の通り
錐体路 34%
錐体外路徴候 88%
無動無言 15%
視覚異常 47%
ミオクローヌス 69%
Discussionからの内容をまとめると
・失調は特徴的 MV1 MM2 VV2よりは頻度が明らかに多い
・錐体外路徴候はVV1 VV2より多い
・ミオクローヌスはMM1に比してかなり少ない
・錐体路徴候も他の型に比べて少ない
◇MV2型の検査所見
・14-3-3 protein
感度76%で過去の研究より高い値となったが
典型的なsCJDよりはやはり低い
髄液検査は25名で施行、3名は2回施行、2名で3回施行している
本研究ではそれぞれの髄液に対して2回ずつ検査を施行
初回陰性で2回髄液検査を施行した3名の患者のうち2名で
陽性の結果となった
MV2型では経過が長いので初期には出なくても
その段階によって異常が認められることがあるのかもしれない
・tau protein
感度89%とこちらでも過去の研究より高い値が得られた
他のsCJDよりは低い
・EEG
周期性同期性放電を認めたのは8%のみ
MV1/MM1では有用だが他の型では極端に異常の出る確率が低い
◇MV2型のMRI所見
・大脳基底核の所見は感度が高い
T2で90%、拡散強調・FLAIR・PD-weighedで100%
・視床枕の病変はDWIで88%に認められており
ここまでの頻度は他のsCJDの型では認めていない
またMM1型では視床病変は稀とされる
★参考文献
神経内科疾患の画像診断 秀潤社
神経内科Clinical Questions & Pearls 神経感染症 中外医学社
コメントを残す