今回のテーマは「〜を明らかにする」です。医学論文においてbackgroundで研究の目的を明らかにする際に、かなりの頻度で使われる動詞だと思います。
コレステロールに関する脳梗塞の二次予防の論文を読んでいて以下のような表現がありました。
To properly elucidate the association of LDL-C–lowering statin-based therapies with secondary stroke prevention, …
“JAMA Neurol. doi:10.1001/jamaneurol.2021.5578
この”elucidate”という単語はbackgroundで時折見掛けられますが、どうも馴染みが薄くて自分で書くときに使えるとは言い難い、、、そこで他の類義語と合わせて勉強してみました。
また、現在論文やアカデミックな場面で役立つ英語表現を毎日流すtwitterアカウントも作ってますので、よろしければこちらからどうぞ。
単語の意味と共起表現
単語の意味と使われやすい共起表現を見ていきます。
・reveal
to tell someone a piece of secret information
revealは前にも一度記事を書きました。
(秘密にされていたものが)明らかになる、という意味ですので、過去から「こんな経過があって明らかになった」というものや「もともとあったものが(検査や解析をすることで)明らかになった」という場合に適しているようです。
・uncover
to discover something that had been secret or hidden
revealとほぼ同じように見えますね。ただ、実際の使われ方としてはrevealと比較するとuncoverの方がmechanismなど機序を明らかにした、という意味で使われることが多いようです。
後の実際の例でもみていきます。
・clarify
to make something clear or easier to understand by giving more details or a simpler explanation
「詳細な情報を得ることで、明らかにする」という意味で機序などに対して使われます。研究の目的を語る上で非常に使いやすい単語だと思いますが、それ以外にもissue, meaning, misunderstandingなど実験というより言葉の上で明らかにしていくという意味でも使われるので、この後に紹介するelucidateの方がより研究のbackgroundではマッチしているのではないかと考えられます。
・elucidate
to explain something or make something clear
ほぼclarifyと同じ感じがしますね。こちらも機序を明らかにするという意味で使われます。使われ方だけだと正直比べても全然違いが分からないので、ここは大局的にコーパス(COCA)を使ってどんな分野で使われることが多いか比較してみます。
コーパスというのはテキストや発語で出された言語を大量に集めたデータベースのことで、それを使うとその動詞がどのような状況でより使われやすいか(例えばフォーマルなのかカジュアルなのかなど)がわかります。
clarifyはこんな感じです。
一番右端の”ACAD”が学術的な分野を示しますので、こちらが最多ですが、”SPOK”という口語や”BLOG”, “WEB”といった分野でも目立ちます。
これに対してelucidateでは
圧倒的に”ACAD”が多いですね。他は軒並みclarifyよりは低くなっています。こうしたところをみるとelucidateの方が論文の表現としては合っているのかなと思えてきますね。
COCAなどのコーパスの使い方について興味がある人はこちらもご覧ください。
今回扱った動詞については以下のページでも簡単に解説されています。
(Cambridge Dictionary | English Dictionary, Translations & Thesaurus
単語の原義はこちらから引用)
(共起表現はこちらを参考にしています SKELL)
(勉強の方法はこちらの本を参照 https://nounai-中級者から上級者になれる着実な英語の勉強法『英語独習法』レビューl)
医学論文を含めた用例
EEG failed to reveal electrographic seizures.
Neurology. 2022 Mar 9;10.1212/WNL.0000000000200347.
こちらはレジデント向けの教育的症例報告のコーナーから。疾患という隠されたものを明らかにしようとしたけど失敗した、ということで、「検査によって明らかにする」というのはよくrevealが使われます。
Our data reveal loss of presynaptic terminal integrity in early HD,
Neurology. 2022 Jan 4;98(1):e83-e94.
データによって明らかにするという時でも同様に使われます。メカニズムを明らかにする、という点ではあまり使われているのは見受けられません。
To summarize overall patterns of the impact of neighborhood socioeconomic status (nSES) on stroke incidence and uncover potential gaps in the literature,
Neurology. 2021 May 11;96(19):897-907.
Further exploration of microvascular dysfunction and CSF dynamics may uncover new mechanisms and intervention targets to reduce SVD lesion development, cognitive decline, and stroke.
Neurology. 2020 May 26;94(21):e2258-e2269.
uncoverはメカニズムを明らかにするという点でも使われますし、上の例のようなpotential gapといった隠されたものを明らかにするという点でも使われているようです。
… radiographic and laboratory data that may clarify mechanisms of pediatric AIS in the setting of SARS-CoV-2.
Stroke. 2022 Apr 5;101161STROKEAHA121038250. (AIS; acute ischemic stroke)
Further studies should clarify whether ICH location needs to be considered in HE treatment paradigms….
Neurology. 2020 Dec 15;95(24):e3386-e3393. (ICH; intracranial hemorrhage, HE; hematoma expansion)
メカニズムや法則を明らかにするという意味合いでいずれもclarifyが使われています。
This rapid systematic review aims to elucidate the risk of lamotrigine on sudden death or electrocardiogram abnormalities.
Neurology. 2022 Mar 8;10.1212/WNL.0000000000200164.
こちらはどちらかというと上述のreveal, uncoverと近い意味合いで(もともとあったと思われるけれどはっきりしなかったリスクを明らかにする)使われています。
Finally, our analyses help elucidate the pathophysiology of this rare entity.
Neurology. 2022 Mar 15;98(11):e1197-e1203.
こちらはpathophysiology(病態生理)ということでメカニズムを明らかにするという意味合いですね。
clarify, elucidateはメカニズムなどを明らかにするということで、いずれもbackgroundの締めとしてよく使われています。二つの違いはあまりはっきりとしませんが、個人的には先ほどのコーパスを参考にしてelucidateを使っていってみたいとは思いますね。
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