今回からは2021年の統計応用(医薬生物学)の解答例を考えていきたいと思います。例によって解答が不十分である可能性はありますので、誤りがあればお手数ですが教えていただきたいです。
まずは本番で選択しなかった問4から。
問題の概要と解答例
メタアナリシスの問題で対数リスク比を変量効果モデル(random-effect model)で統合していく流れとなっています。慣れていないために敬遠してしまったのですが誘導が丁寧かつ難解な計算が出てこないので選択しても良かったと思います。そうはいっても本番は解けるかどうかわかりませんが、、、。
(1)
最初は対数リスク比が従う確率分布を示す問題です。これは正規分布の再生性を抑えていれば簡単です。
正規分布の和の再生性
\(X\sim N(a,b), Y\sim N(c,d) のときX+Y\sim N(a+b,c+d)\)となる
ここから
\(Y_k\sim(\mu, \sigma_k^2+\tau^2)\)
となります。
(2)
続いては最尤推定を考えていきます。
まず(2-1)は対数尤度です。これは(1)で\(Y_k\)が従う分布を求めましたので、それを使えば尤度関数は
\(L(\mu,\tau^2)=\pi_{i=1}^4\{2\pi(\sigma_k^2+\tau^2)\}^{-\frac{1}{2}}\exp\{-\sum\frac{(Y_k-\mu)^2}{2(\sigma^2_k+\tau^2)}\}\)
となります。
よって対数を取れば
\(logL=-\frac{1}{2}\sum\{log2\pi+log(\sigma_k^2+\tau^2)\}-\sum\frac{(Y_k-\mu)^2}{2(\sigma_k^2+\tau^2)}\)
となります。
(2−2)はμの最尤推定を導出する問題です。本来のメタ解析ではτをどうするかが問題となりますが、今回は推定量に置き換えて良いということなので、ただ単純に最尤推定量を求めるだけの問題となります。
よって、先ほどの対数尤度関数をパラメータμで偏微分して
\(\frac{\partial}{\partial\mu}logL=\sum\frac{Y_k-\mu}{\sigma_k^2+\tau^2}=0\)
として整理すると
\(\hat\mu=\frac{\sum\frac{Y_k}{\sigma_k^2+\tau^2}}{\sum\frac{1}{\sigma_k^2+\tau^2}}\)
となります。
(2-3)は上記に数値を当てはめるのみなので、省略します。
(3)
(3-1)では上記の最尤推定値の分散を求めます。ここではτを既知として扱うので計算は簡単です。
\(V(\hat\mu)=V(\frac{\sum\frac{Y_k}{\sigma_k^2+\tau^2}}{\sum\frac{1}{\sigma_k^2+\tau^2}})\\=\frac{1}{(\sum\frac{1}{\sigma_k^2+\tau^2})^2}V(\sum\frac{Y_k}{\sigma_k^2+\tau^2})\\=\frac{1}{(\sum\frac{1}{\sigma_k^2+\tau^2})^2}\sum\frac{1}{\sigma_k^2+\tau^2} (V(\frac{Y_k}{\sigma_k^2+\tau^2})=\frac{1}{\sigma_k^2+\tau^2}より)\\=\frac{1}{\sum\frac{1}{\sigma_k^2+\tau^2}}\)
(3−2)も同様に数値を当てはめるだけなので省略します。
メタアナリシスで行われていることを簡単に学ぶためにはいい問題でしたね。
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