4月から大学院生活も始まり、ちゃんとした論文を今後書くということになるので、論文管理の必要性がより高まってきています。
そこで、長年使ってきたMendeleyから最近とにかく評価の高いPaperpileへ移行してみました。
Paperpileの評判は噂通り申し分ないレベルで、今後の使用もワクワクしていますが、Mendeleyとの比較や移行のきっかけ、移行方法などを簡単にまとめておきたいと思います。
同様にMendeleyからの移行を考えている人や今後文献管理ソフトの使用を考えている方に参考としていただければ幸いです。
Mendeleyとは
Mendeleyは学術ジャーナルの超大手出版社エルゼビアが運用している文献管理用のソフトウェアです。
手持ちのpdfファイルから文献をアップロードすることで、自動で文献情報を読み取って自分専用のライブラリに追加していくことができます(日本語文献だと文献情報の読み取りは失敗することが多いです、これはどのソフトも一緒)。ライブラリはWeb上で同期されます。
MendeleyのサイトあるいはPubmed, Google Scholarから文献情報を追加することもできます。PubmedやGoogle Scholarを使う際はChrome, Firefoxの場合Mendeley Web Importerという拡張機能を使う必要があります。
専用ライブラリは2GBまでで独自のクラウドを使用でき、それ以上欲しい場合は有料となります。2023年5月28日時点で料金は月$4.99で5GB, 月$9.99で10GB、月$14.99でunlimitedとなっています。なお、年単位の契約ですと最も安いプランで約$4.58ともう少し安くなります。
使い方としてはwebブラウザからアクセスできるほか、デスクトップ版も存在しています。フォルダ管理やタグづけ、注釈もつけられますし、使いやすさはまずまずといったところでしょうか。かつてはiOS app版もあり使っていましたが現在はサービス終了しています。正直iPadユーザーとしてはこの変化は大きいです。
文献をiPadにダウンロードした場合、いちいちMendeleyのサイトを開いてアップロードするのはインターフェースがイマイチなのでそれなりに面倒でなのと、逆にMendeleyの論文をiPadで読むのはインターフェース的に読みづらいので、ここは複数のデバイスを使うユーザーにはかなりの問題になると思います。
Paperpileとは
Paperpileは2012年から誕生した文献管理ソフトウェアです。公式ページを見ますと計算生物学を専門とする研究者3人が作り上げてきたソフトとのことで、研究者が必要とする機能を”just works” solutionで提供することを目的としているようです。つまり、必要なものをシンプルにすることが目標なわけですね。
その言葉通りインターフェースはシンプルで使いやすく、動作も軽快です。Mendeley同様に文献の引用作成もスムーズです。
Mendeleyと同様に文献情報は自動で読み取りをしてくれてクラウド上に保存されます。
Mendeleyとの大きな違いはGoogleとベッタリ連携している(というか他との連携が薄い)点です。Google ScholarやPubmedから直接文献情報を追加するにはGoogle Chromeの拡張機能を用いてしか行えません。
さらに、クラウドの保存先は基本的にGoogle driveです。2023年5月28日時点で調べた範囲ですとiCloudやOneDriveとは連携できないようです。Google driveユーザーには良いかもしれませんが、無料での容量が15GBなので既に使ってしまっている人は困るかもしれません。
ただ、Google driveの有料プランであるGoogle Oneでは月額¥250で100GBまで使えますので、容量不足があったとしても安いです。
そして使い方ですが、iOS app版があり、mobileでもiPadでも良好な使い心地です。Google driveが基本の保存先であるためインターネット通信がなければ全てのライブラリへのアクセスはできませんが、端末へのダウンロードも可能であるため持ち歩いて読みたいものをダウンロードしておけばいつでも読むことができます。
さらにApple Pencilの書き込みとの連携もバッチリ。論文上に手書きをしたものも情報共有されますので、自分のようなApple Pencil愛用派との相性は抜群です。2年前に購入しましたが、Apple Pencilの素晴らしさについては未だに実感し続けています。
さて、Paperpileの注意点としては有料であることです。月額$2.99ですが無料プランが存在しない上、年間契約しかできません(年額$35.88)。30日間無料トライアルはありますので、試してみてどうか判断することはできます。
MendeleyとPaperpileの比較
さてここまでの内容を簡単に表にまとめてみます。
内容 | Mendeley | Paprepile |
---|---|---|
料金 | 2GBまで無料 | 月$2.99(年契約)で15GB(Google driveに依存) |
保存先 | 独自クラウドとローカルファイル | Google Drive |
文献追加 | ローカルファイル、文献検索サイト | ローカルファイル、文献検索サイト |
Pubmedなど 連携 | Chrome, Firefox | Chromeのみ |
App連携 | Appなし | Appあり、Apple Pencilなどでの書き込み可 |
オフライン | 利用不可 | デバイスにダウンロードしておけば利用可 |
文献引用機能 | 可 | 可 |
上記の点について個人的にMendeleyで困っていたことは
・デバイス間での同期が面倒くさい
・iPadで読むときにオンライン環境でないとMendeleyが使えない
・Apple Pencilで書き込みができない
・元のpdfファイルが探しにくい(Pythonでイジイジする時とか)
・app版のようにサービス減っていきそうで怖い
という点でした。これらの問題がPaperpileであれば
・App版があるので同期が簡単
・ダウンロードすれば読みたいものもスムーズに読める
・Apple Pencilで書き込み可
・元のpdfファイルは全てGoogle driveで管理
・有料なのでそれなりのサービスは維持される(であろう)
という利点だらけでしたので移行を決意しました。
有料である点はどうしても違いとして残りますが、補って有り余る利点があると判断しました。PaperpileはGoogleとベッタリすぎる点もありますので、そこも人を選ぶ部分もあると思います。
なので、一般的にこの二つを比較した際、Paperpileを勧めたい人というのは
・iPadなどタブレット端末を含む複数デバイスで文献を扱う人
・Apple Pencilを使いたい人
・容量が2GBでは絶対足りない人
・サクサク軽快な動作が欲しい人
あたりでしょうか。メインの端末としてPCしか使わないし、オンラインで常に仕事できるよ、って環境の人であれば別にMendeleyでも問題ない気がします。
MendeleyからPaperpileへの移行
さて、最後に驚くほど簡単であったMendeleyからPaperpileへの移行です。
Paperpileのアカウントはdriveを使用したいGoogleアカウントとの連携するとスムーズですので、Googleアカウントでログインします。
メインの画面から”Add Papers”という左上のボタンを押すと以下のようなメニューが出てきます。
“Import from other Programs”からMendeleyを選びますと、Mendeleyのアカウント入力画面に移動します。
入力してうまくいけば上のような画面となり、文献情報がすべて入ります。文献情報のみであれば比較的すぐに終わります。フォルダーやラベルなどもすべて引き継がれるようです。
さらに右上のGoogle Driveボタンを押すと文献をGoogle Driveへアップロードできます。これはどうしても時間を要するので30分以上はかかったのではないかと思います。下の方をみてみるとHas no PDF(95)とありますので元ファイルが行方不明となってしまった文献もそれなりにあるようですね、、、。ローカルファイル管理はやはりきちんと整理ができないとイマイチです。
そんなわけで合計1時間程度あればさくっと終わりました。元ファイルの居場所だけ気を付ければスムーズに移行できそうなので、今後文献管理ソフトを使い始める人はまずMendeleyで始めて、気に入らなかった移行するというパターンでも良いかもしれません。
まとめ
MendeleyとPaperpileの比較から移行の流れをざっと紹介しました。Paperpileは移行のことをきちんと考えてくれているためか、移行がスムーズであったので正直試したいものを最初はいくつか使ってみても全然良いと思います。
医学生時代や研修医の頃にはこういった文献管理ソフトを勧めてくれた人というのはいなかったのですが、論文は読んで整理して蓄積すべきものだと思いますので、早めからこういった管理をして、情報を整理していくことがオススメです。
課金できる人やバリバリ論文読んで書く人であれば医学生・研修医のうちからPaperpileでも良いと思いますが、読むだけのことが多い通常の人はMendeleyでも十分だと思いますので、お好みのものを選んでもらえれば良いのかなと思います。
使ったことないのでわかりませんが、いずれも有料系なら他にもReadCube papers、Zotero、Endnoteなどなどもありますのでさらに調べても良いかもしれません。
ネット上で情報を調べると皆さん自分の使用しているソフトウェアが大好きなためか「最強の文章管理ソフト!」みたいなタイトルの記事がいっぱい出てきますが、人と環境によって合う合わないがあると思いますし、ChatGPTなどの大規模言語モデルの活用を踏まえるとまだまだこれからもトレンドが変わっていく可能性は高いので、移行する可能性も見据えてファイルはきちんと整理しながら現時点で合うものを使っていくのが良いのではないでしょうか。
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