最も気さくな行動経済学本「予想どおりに不合理」

以前に読んだ「学力の経済学」で著者がダン・アリエリーの本に強く影響を受けた、と書き出しに書いてあったので、調べて本買ってみました。

 

これが読んだらまた面白かったので、3冊ほど同じ著者の作品を買ってしまいました。今回紹介するのは著者の中でもベストセラーとなっている「予測どおりに不合理」です。

 

 

 

行動経済学とはwikipediaによると

行動経済学(こうどうけいざいがく、英: behavioral economics)とは、経済学の数学モデルに心理学的に観察された事実を取り入れていく研究手法である。(日本版wikipedia)

 と書かれています。

 

経済学というともともとは人間を合理的な考え方をするもの、として確率計算・利益計算をしっかりこなして自らがプラス収支となるように、選択をしていく前提で考えられていた学問ですが、実際人間には多くの「心理的にとりやすい傾向」があり、それを踏まえて経済学を捉えなおしたのが行動経済学だと思っています。

 

今回紹介する本は行動経済学の本でありながら、ユニークな実験が多く、文体も面白かったのでぜひおすすめしたいと思います。

 

ダン・アリエリーってどんな人?

 イスラエル系アメリカ人でデューク大学で現在も教鞭をとっているようです。

 

18歳の時、事故で体の70%に火傷を負い、その後治療中、全身を覆うスパイダーマンのスーツのようなもの(本人談)を着て生活する中で、「以前は自分にとってあたりまえだった日々の行動を、第三者のように外から観察するようになった」ようです。

 

その意識を前提として日常の事柄を改めて見直し、行動経済学者として人間の不合理的な考え方を数々の実験で立証しています。

 

例えば、ネタとして面白い発見に与えられるイグ・ノーベル賞を「高価なプラセボは、安価なプラセボよりも効果が高い」という発見で受賞しています。これも高価な健康食品に沢山の人が群がっていることを思うと、なかなか面白い実験です。実際そのほうが効果もあるように感じられるでしょう。

 

日常に応用の効く面白すぎる実験たち

本書では数々の実験と、その結果の日常への応用が紹介されています。

 

例をひとつ挙げてみましょう。

 

<エイモス・トベルスキーとダニエル・カーネマンの実験>

本書の内容を値段がわかりやすいように円に直して例示してみます。

 

2500円の万年筆を買おうと思ったとします。15分歩いて別の店に行けば、セールで同じ万年筆が1800円で手に入ります。このときあなたは別の店に行くでしょうか?

 

もう一つの質問です。

 

45500円するグレーの縦縞の高級スーツを買おうと思ったとします。15分歩いて別の店に行くと、少し値引きをされていて44800円で売っているようです。このときあなたは別の店に行きますか?

 

さて、一つ目の質問で「行く」と答えた人も(それも行かないほどお金に余裕のある人はさておき)二つ目の質問では「行かない」と答えたのではないでしょうか。同じ15分=700円という換算なのに違いが出るのはなぜでしょうか。

 

前述したように「人間が合理的に考える(=もともとの経済学の視点)」のであれば、同じ行動をとるはずです。こうならない理由を、理論にしていくのが行動経済学です。今回の例であれば「相対性」が問題となります。価格が低いもの(万年筆)に対して、値引きの700円は相対的にみて大きくなりますが、価格が高いもの(スーツ)に対して値引きの700円は相対的にかなり小さくなります。そのため値引きの効果を小さく感じ、わざわざ歩いて他の店に行かなくなったわけです。

 

例えばこれは家電製品や家具、もっと大きいもので言えば、車・家を買う時はよくわかると思います。家電製品や家具のオプションでひとつ数千円単位かかるものや長期保証も何千円というものがありますが、それ単体で考えたときに買おうと思わないものでも高価な商品を買ったあとだと追加で支払ってしまう場合があります。車・家についてはもっとその効果が大きく、オプションは何万~何十万円単位でかかる場合がありますが、これも単体であればもっと悩むのに(例えば購入した後にあとでオプションをつける場合)その場で考えると、ぱっとつけてしまうときがあります。これは購入しようとしたものがあまりに高価なのでオプションが相対的にみて小さくみえるから、ということに他なりません。

 

さらに面白いことには、これはモノと値段の関係だけでなく人の評価でも応用ができます。この「相対性」の特徴として比較されるものがある場合に優劣が際立つ、という特徴があります。本書で例として出されているのは、海外で周りの人をあまり知らない状態で自分と同じ国の人に会ったときに、すごく気が合うように思える(周りの海外の人と比べて相対的に気が合うはず)のに、自国に帰って会ってみるとそうでもなかった(自国にはもっと気が合う人がいっぱいいるので相対的にはそうでもない)と思える例を挙げています。人間は「参照点」をもって比較することで物事・人を評価するため、その「参照点」次第で評価が変わるという例となっています。

 

意味を考え直す点で哲学に近い

上記のような面白い実験や研究結果が盛りだくさんですが、中でも笑えるのは「マスターベーションしながら質問に答えた場合に倫理的な考えは変わるのかどうか(性的衝動が考えをどれだけ変えてしまうのかHIVの感染予防を考えるうえで重要というまじめな目的)」という実験でカリフォルニア大学バークレー校の男子学生を使ったもの。実験するうえで許可をとるのが大変だったそうです(笑)。日本でやったらすごい叩かれそうですね。

 

TED conferenceでも著者が話していますが、この本を通じてみえてくるのは、「何が人を動かすのか」というテーマ。自分たちが当然だと思っている事柄を「なぜそう動かされるのか」改めて捉えなおすという意味では究極的には哲学的な学問だな、と感じます。思った以上に不合理なことにあふれている自分たちの行動や生活に気づかされる一冊で、日々の生活で行う様々な選択だけでなく医療も含めてかなりの幅に応用ができそうな内容でした。

 

TED conferenceは一流のスピーカーが広めたいアイディアをもとにプレゼンするもので、著者はいくつもここで講演していますが、ついでにひとつ貼っておきます。

 

www.ted.com

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