おはようございます。
今日は引き続き、行動経済学の話を書いていこうと思います。
今回は「損失回避」について。
プロスペクト理論①-確実性効果-【日常生活に活かす行動経済学の使い方】 – 脳内ライブラリアン
プロスペクト理論②-参照点依存性-【日常生活に活かす行動経済学の使い方】 – 脳内ライブラリアン
目次:
損失回避とは?
傾向として、人はちょっとした損失でも利益より影響を大きく感じやすい、ということです。具体的に実感できる事例からみてみます。次の2つの設問に答えてみましょう。
1、A コインを投げて表が出たら2万円もらい、裏が出たら何ももらわない
B 確実に1万円もらう
2、A コインを投げて表が出たら2万円支払い、裏が出たら何も支払わない
B 確実に1万円支払う
(医療現場の行動経済学p.35-36)
期待値の計算に則ればどちらも同じであり、両方の選択肢を選ぶ人に差は出ないと思われますが、実際には1ではB、2ではAを選ぶ人が多いと言われています。違う選択肢の方もいたかもしれませんが、一般的な傾向については、損失に対してリスクをとりやすいことになります。しかしながら、設問を少し変えると、その傾向に変化が起きます。
3、あなたの月収が30万円だったとする。
A コインを投げて表が出たら今月は月収が28万円、裏が出たら30万円のまま。
B 今月の月収は確実に29万円。
これだとどうでしょうか。先ほどの設問2でAを選んだ人でも、Bの選択肢を選ぶ人が多いと言われています。2と3は本質的には全く同じ質問ですが、30万円という月収を”参照点”として考えた時に少しでも減るのが、心理的には大きく減ると感じられる ようです。
価値関数
利益と比べると損失は少しの量でも強く感じられてしまう傾向をグラフに表したのが、価値関数です。
(医療現場の行動経済学p.38)
横軸に変化の量(例えば金額とか)、縦軸に感じられ方をとっています。原点が”参照点”というところでしょうか。少しでも原点から移動すると急激にがくっと下方向にグラフが下がっているのが分かります。逆に利益はそこまで急激な変動はないようです。
感応度逓減性
ちなみにこのグラフをみると利益も損失も変化量が大きくなればなるほど、緩やかになっているのが分かります。これを「感応度逓減性」と言います。「逓減性」って単語が聞いたことなさすぎて、何だろうと思ったのですが、要するに漸減と同じ意味で徐々に減るという意味です。
例えば、1000万円が当たるくじと1100万円が当たるくじを買う時に、どちらがより当たる確率が高くて、どっちを買うべきか厳密に考えたりするでしょうか。まあ何となく似たりよったりに感じます。
これが1万円が当たるくじと101万円が当たるくじならどうでしょう。全然違うものに感じられるのではないでしょうか。金額が大きくなると実感がなくて小さな差は無視されることがあります。前にも紹介した大きい買い物をするときと同じですね。
日常生活で気を付けることは
大抵の人は日常的に確率を計算するという行為は苦手です。また確率が分からないことも沢山あります。そうすると自分の「感覚」に頼らざるを得ないのですが、ここで「損失回避」の傾向に気づくことが大事です。
損失のリスクがあるものというと、例えば保険や投資でしょうか。もしこういう損害があったらどうしよう、という不安につけ込んでくる商品には注意が必要です。保険商品はものによっては、補償をエサにしながら(ここが損失回避傾向をゆさぶるポイント)貯蓄性のさほど良くない、なんなら実はリスクの高い商品があります。「もしも」がどのくらい起こることなのか、また保険以外にも対処の仕方があるかどうか、冷静に考えた方が良いでしょう。なので、個人的には保険は生命保険くらいで留めて、貯蓄は低リスクな投資にまわしてます。
また広告やテレビで見る「知らないと損する」なんていうキャッチコピーも損失回避をくすぐるものです。知らないと損するのか知ってると得するのかは、見方によって変わるものですが、「損する」と言われるとつい気になってしまうものです。
続きの記事はこちら
プロスペクト理論④-確率加重関数-【日常生活に活かす行動経済学の使い方】 – 脳内ライブラリアン
参考文献:「ファスト&スロー」「行動経済学〜経済は『感情』で動いている〜」「医療現場の行動経済学」
今回の話も主にここから参考にしています。
行動経済学について知るだけでなく、自分の視点が大きく変わるので大変おすすめです。
新書ですがぎっしりと基本が詰まっており、理論も掘り下げています。それでいて分かりやすく入門書としてお勧めです。
医療の現場に合わせて書かれた行動経済学本です。普段の患者説明などなど患者さんが心理的にどう考えるのか具体的な事例をもって書かれており、「確かにこういう傾向あるな」と納得できる例も多く、患者心理の理解を進めるうえでも、自分たちの心理を知るうえでも面白かったです。
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