医師が弱い3つの分野をご存知でしょうか。
それは政治、経済、法律です。(※あくまで個人の見解です)
医師というのはどうしても学ぶことが無限にある医学に勉強分野が偏らざるを得ないので、他のことを学んでいる余裕がないことがおおいです。よく病院にも不動産投資のセールス電話がかかってくるのですが(しかも勤務中に!悪質です)経済に疎いとだまされる医師がいるのでかかってくるのです。
しかしながら口頭発表や論文作成などするうえでかかせないのは著作権に関する知識。そこでこんな本があったので読んでみました。
南山堂の月刊誌「薬局」で連載された記事をまとめたもので、医療従事者が普段ぶつかるような著作権に関する疑問をQ&A方式でまとめています。実際、このブログで医学論文を扱う際のことが知りたくて買ったのですが、そこはまた後日記事にするとして、今回は書評のみに留めます。
ちなみに著者について調べてみましたが、なんと米国の司法試験まで取っているようです。知的財産などを専門にされています。著者のサイトの法律事務所の利用規約にはきっちりとリンクフリーではない旨と、著作権について明示してありました。さすがです。
意外と多い著作権絡みの問題
口頭発表を初めてするときは何となく上級医の発表を参考にしたりして「こんなもんかな」と引用の仕方もマネをしていますが、ふと使われている写真やイラストをみたときに、どこまでが著作権を意識しなければいけないのか、また配布する資料などはどうなのか、気になったことはないでしょうか。
意外と日常的な発表で使う機材や薬品、有名人の写真、イラストについても十分に気を付けないといけません。本書ではそういった事柄について、法律的にどの点が許されて、どの点が許されないのか、実際の判例も交えながら、図も用いて分かりやすく紹介されています。比較的ページ数も多くないので1時間ほどでさらさらと読めるのも良いところです。ネットの画像やイラストはさすがに使っちゃいかんのは分かるので、自分の場合は基本的に「いらすとや」などのフリー素材サイトを頼ってます。
また話がややこしいのは論文・共同研究、二重投稿などについて。これは確かにもめると大変です。出した論文が撤回なんかされた日には涙が出ます。実際に論文を出す前によく読んでおきたいです。
著作権上の例外である「引用」については、分かりやすく説明したwebサイトも結構あるので、ブログを始める頃に調べて知ってはいましたが、グラフやデータがそもそも著作権が発生しないものもあることは知りませんでした。(誰がやっても同様に得られるデータは自然なものであり、著作権はない、、、が表・グラフなど描いた人の考えが入るとどうもそうとは言えない)この辺の細かな違いはなかなかネットだと正しい知識か不安になるのでやはり一冊確かな知識になる本を持っておきたいです。
判例って面白い
本書中にはさまざまな判例が出てくるのですが、単純に、「そんな訴訟あるんかい」ということと「法律をどう解釈するか」ということで面白いです。”博士イラスト事件”とか”タウンページ・キャラクター事件”(検索すると出てきます)なんかはもう他人の空似じゃん、、、としか思えないのですが、訴訟になると考えると恐ろしい話です。
何らかの発表の機会が少しでもある医療従事者は一度は通読することを勧めたい一冊です。
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