日本の教育に対する著者のため息が聞こえてくる「学力の経済学」

育児関連の本をまた読んでみたので紹介します。

 

5年前の本にはなりますがこの本もエビデンス重視されており、説得力をもって参考になりました。

 

「学力」の経済学

「学力」の経済学

  • 作者:中室 牧子
  • 発売日: 2015/06/18
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 

著者は「教育経済学」を専門とする方であり、教育に関係する経済的なコストや効果を科学的な根拠をもって示しているのがこの本です。

 

ご褒美で釣っても良いのか?

ほめて育てるのは良いのか?

ゲームをすると暴力的になるのか?

 

こういったよく問題となる疑問にも科学的に結論を導き出しています。

 

前回紹介した育児本と同様に、どうしてもエビデンスにこだわりたくなるタチなので、そういう自分には参考になりました。

 

褒美やほめ方はやり方次第

導入部分において、先ほどの3つの質問の著者の解答としては

「ご褒美はOK、ほめるのはダメ、ゲームはさせても良い」

と書いてありますが、厳密にはほめるのはダメというより、やり方の問題のようです。

 

前回紹介した本と同様に、プロセスをほめることが必要で、結果のみをほめたり、褒美を出して求めることはダメということです。

medibook.hatenablog.com

そういったやり方では結果もついてこなくなってしまう、というのが研究結果からの解釈です。

 

子どもの教育にお金をかけるのは、いつが一番良いのか?

またもう一つ疑問として興味深いのは、子どもの教育にお金をかけるときに、かけた金額と返ってくる結果(収益率)が最もよいのは

いつか、という疑問。

 

この本の結論としては幼児教育に最もお金をかけるのが良い、ということのようです。

 

その根拠として出されている研究で興味深いのはペリー幼稚園プログラムというものです。

 

1960年代に開始され、その後も結果をフォローされている研究でシカゴ大学のヘックマン教授を中心に行われています。

 

実験の内容としては、低所得のアフリカ系アメリカ人の3~4歳児に対して、「質の高い就学前教育」を施した群(58人)とそうでない群(65人)をランダムにわけ、その後の経過をフォローし続けるというもの。

 

めちゃくちゃ気の長い話です。

 

医学研究でいうランダム化比較試験にあたります。

 

ちなみにその質の高い教育というのは

・幼稚園の先生は児童心理学専門家に限定する

・子ども6人に先生1人の少人数制

・午前中に2.5時間、読み書きや歌のレッスンを週5日間、2年間

・週に1回、1.5時間の家庭訪問

とかなりの力の入れっぷりです。

 

その子どもたちを40年以上フォローし続けたわけです。すると、結果として介入した群では

 

6歳時点でのIQ→高い (ただし、あとで差はなくなった)

19歳時点での高校卒業率→高い

27歳時点での持ち家率→高い

40歳時点での所得→高い

40歳時点での逮捕率→低い

 

という結果となりました。それぞれの条件を満たす割合に各群で差が出たようです。

どれぐらいの差が出たのか具体的な数値については”Lifetime effects: The High/Scope Perry Preschool Study through age 40.”でググると元の論文のサマリーみたいなのが読めます。

 

余談ですがこの本に書いてある棒グラフは横軸が0-1%となっており、0-100%の誤植と思われます。

(そもそも各群の参加人数が100名いないので1%以下はあり得ない)

 

この結果をどう解釈するか、ですが対象がアフリカ系アメリカ人の低所得者層ということで

日本の幼児教育でも同様のことをすればよいのかどうかは不明ですし結果として出た各指標が本当に本人の幸福に結びついているかは疑問ではあります。

 

国の立場から考えれば所得が高いことや逮捕率が低いことは有用だと思いますが、子どもの幸せを一番に考える親の場合は当てはまるのかどうかわかりません。

 

ただ結果として間違いないく面白いのは

「就学前のわずか2年の教育が40歳になっても影響を及ぼしている」ということでしょう。

 

ここまでの影響が及ぶのであれば幼児教育が最も収益率が高い、という考えも多少なりとも納得できるように思います。

 

後半は著者のため息が聞こえてくる

こうしたランダム化試験などの統計的な意味合いを持った教育研究は基本的にアメリカのものがほとんどで、日本のものが少なく、また日本の教育政策もこういった科学的な根拠に則っていないことに著者がため息をついています。

 

後半の教育政策についての話では、その辺りの厳しさが出ていますがそうなる気持ちも最もかなと思います。

 

既に我が家の第1子も2歳を過ぎ、徐々に成長していますが、どうしても割ける時間も限られているので自分がいるときはもちろんのこと、いないときの過ごし方も考えていかないといけないな、と思わせる一冊でした。

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