ここまでは知っておきたいメタアナリシスの読み方② -バイアスリスクについて(risk of bias)-

前回記事はこちら

ここまでは知っておきたいメタアナリシスの読み方① -システマティックレビューとメタアナリシスの違い- – 脳内ライブラリアン

 

引き続きメタ解析の読み方について紹介していきます。

 

目次:

 

バイアスリスク

一定の検索条件に沿って集めた論文を厳選したあとは、バイアスリスクの評価をしなければいけません。たいていの場合論文中に”risk of bias”という形で書いてあると思います。

 

例えばランダム化比較試験を集めたメタ解析で、二重盲検されていない研究があったとするとバイアスがかかるリスクが上がります。こういった評価項目(二重盲検されているorされていない)を多数用いて最終的にその研究のリスクがどれぐらいか(high or lowなど数段階での評価)を行っていきます。

 

評価項目に何を用いるかは論文中に明記してありますが、必ずコレ!と決まった方法があるわけではないです。論文によっては赤、緑、黄色などの〇が並べられた表がつくられていることがあります。これは論文ごとのリスク評価を示した表で、どの研究がどの点でバイアスの危険性があるのかを明示しています。

 

報告バイアス(reporting bias)

もうひとつ重要なのは報告バイアスです。

 

効果がなかった、あるいは有害事象が多かったstudyは報告まで挙がらないことが多い、というバイアスのことを言います。

 

研究者の立場で考えてみると分かりますが、ある治療Aと治療Bは差があるかもしれない!と思って調べてみたら「うーん、差が出なかったなあ」となった場合、「こんなの報告しても意味ないよなあ」となり報告されないことは十分に起こりえます。

 

英語版wikipediaにはさらにこれが細分化されています。

 

Reporting bias – Wikipedia

 

例えば、出版バイアスは報告バイアスのひとつで、効果が出なかったことが原因で出版されにくいバイアスのことです。wikipediaの冒頭に出版バイアス(publication bias)と混同されることがあるので気をつけろよ!と書いてあります。また結果が良くないことで出版に時間がかかる場合はtime lag biasと呼ばれます。どれも報告バイアスの一種です。

 

このバイアスのため効果があったstudyのみが報告され、集められてしまう危険性があるため、特にメタアナリシスでは注意が必要です。

 

大規模研究は結果の如何に関わらず、報告されることが多いため(お金もかかってるし)影響を受けにくいとされています。そのため、小規模研究が多数集められているようなメタアナリシスは特にこのバイアスに警戒する必要があります

 

米国であれば途中で中断された研究もFDAのレポートに載せられていることがあったりするので、研究計画の時点で報告がされていれば、ある程度防げる可能性はあります。

 

前回紹介したJAMA Users’ Guides to the Medical Literatureより引用すると、このバイアスの評価の方法としては主に4つとされています。

Four Strategies to Address Reporting Bias

1. Examine whether the smaller studies show bigger effects

a. Funnel plots, visually assessed

b. Funnel plots, statistical analysis

 

2. Reconstruct evidence by restoring the picture after accounting for postulated publication bias

a. Trim and fill

 

3. Estimate the chances of publication according to the statistical significance level

 

4. Examine the evolution of effect size over time as more data appear
(JAMA Users’ Guides to the Medical Literature 3rd editionより引用)

実際これらの方法も効果が確立された手段ではなく、しかも理想的には30以上の研究が必要、ということで報告バイアスの問題はメタアナリシスにおいて避けられないものではあると思われます。

 

この中から

①Funnel plot
②trim and fill method
③統計的な出版バイアスの検定
④報告が揃って来るまで時を待つ方法

 をそれぞれ見てみます。


①Funnel plot

funnnel plotとは下図のような図を指します。

f:id:medibook:20200630045228j:image

(JAMA Users’ Guides to the Medical Literature 3rd editionより引用)

 

横軸にeffect size(試験の結果の大きさ、次回説明します)、縦軸に正確性(標準偏差とかばらつきを表す指標)をとって、試験を点でプロットします。
中央の点線は結果を統合して要約されたeffect sizeで、右に行くとcontrol群が有効、左に行くと介入群が有効としています。

 

すると本来上に行けば行くほど、結果が正確になるため点線に近づくはずです。逆に下に行けば行くほど、ランダム要素が強くなるので結果がばらつく。さらにこのばらつきはランダムであるため左右対称性になるはずです。

 

なので、左の図は良い例、右の図は悪い例となります。

 

ただし、これだけで何でも説明できるわけではなく、研究毎の均質性の問題で、左右対称になっていないのかもしれないので均質性はよく検討する必要があります。

②trim and fill method

①のfunnnel plotで左右対称になっていない部分の研究を想定して
数値を作り出し埋める、という方法です。研究が均質であれば、たまたま左右対称になっていない部分の研究がされていないだけ、という仮説が成り立ちそうですが、上述のように、そもそも研究が均質でないだけかもしれないので、あまり良い手段とはされていないようです。

 

③統計的に出版バイアスがあるかどうか検定する

Begg’s test, Egger’s testなどの方法があります。数学的に詳細な検定の方法はすみませんが、分かりません。小児科医&疫学者の先生のブログに書いてあった記事が内容として分かり易かったです。

システマティック・レビューとメタ解析について⑦ 〜出版バイアスの評価方法 2(Begg’s testとEgger’s test)〜|ドクターキッド(Dr.KID)

 

・Begg’s test

Funnel plotを検定してみた感じのイメージでしょうか。治療効果と各試験の分散の相関関係を調べます。つまり、メタアナリシスで採用された研究をみたとき、分散が小さく(大規模研究)、治療効果が大きかった研究が多いようであれば、分散と治療効果の相関関係があることになってしまい望ましくないとされます。

・Egger’s test

治療効果と標準偏差の逆数の回帰分析を行って関連を調べます。Begg’s testと同様に治療効果と標準偏差(研究の規模)の関係性があっては良くないといえます。

 

④報告が揃って来るまで時を待つ

まあそれはそうだよね、というところですね。ある程度の研究数がなければ良いメタアナリシスはどうしてもできないので少数研究でされている場合はいくらメタアナリシスのエビデンスが強いと言えど解釈には慎重になる必要があります。

 

(2021.06.28追記 医学論文の読み方関係の記事はこちらにまとめました) 

medibook.hatenablog.com

 

参考文献:

これめちゃくちゃお勧めです。JAMAが出している医学論文の読み方を解説した本で、様々な手法の医学論文を網羅的に説明しています。論文読むたびに一度これを読んで、解釈にどういった注意点が必要なのかを確認しながら進めると、確実に論文を評価する能力と読むスピードが上がると思います。

 

ちなみにこちらが翻訳版です。読んでいるのは原著ですが、英語もさほど難しくないので原著でも読みやすいです。

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