現代数理統計学の基礎、7章の問9です。
指数分布において、最強力検定=尤度比検定を求める問題ですね。「指数分布=ガンマ分布の特殊形」であることが問題を解くのに役立ちます。
まず尤度関数は
\( L(\lambda) = \lambda^n \prod \exp(-\lambda \sum x_i) \)
今回は帰無仮説も対立仮説も \( \lambda = \text{定数} \) と決まってますので、尤度比検定
\( \frac{L(\lambda_0)}{L(\lambda_1)} = \frac{\lambda_0^n \prod \exp(-\lambda_0 \sum x_i)}{\lambda_1^n \prod \exp(-\lambda_1 \sum x_i)} \\ = \left(\frac{\lambda_0}{\lambda_1}\right)^n \exp(-\lambda_0 + \lambda_1) \sum x_i \lt C \)
となります。
\(-2 \log\) をつけてカイ二乗分布を使って終わりでもいいんじゃないかと思ったりするわけですが、解答としては可能な限り単純な形にしたいようです。
そこでまずは式の形に着目すると
\( \left(\frac{\lambda_0}{\lambda_1}\right)^n \) は正の定数
\( (-\lambda_0 + \lambda_1) \) も正の定数(条件より \( \lambda_1 \gt \lambda_0 \) なので)
ということから、尤度比検定の式は結局
\( \sum x_i \lt C’ \)
に集約されることがわかります。
さて、ここで指数分布の和の再生性を利用すると
\( \sum x_i \sim Ga(n, \lambda) \)
となります。
*2個目が \( \lambda \) となっているのは解答とは分布の書き方が違うだけです。こちら参照。
代表的な確率分布を覚えやすいようにまとめてみる②-連続型・標本分布-【統計検定1級対策】 – 脳内ライブラリアン
さらに変数変換を利用すると、帰無仮説が成り立つとき
\( 2\lambda_0 \sum x_i \sim Ga(n, \frac{1}{2}) = \chi^2_{2n} \)
となります。
求める尤度比検定は
\( 2\lambda_0 \sum x_i \lt C” \)
です。
ここで最初自分がわからなかったのは、なぜ \( 2\lambda \) をかけたらカイ二乗分布になるのか、ということでしたが、実は問7の(3)でもしれっとなんの説明もなく、同じ変形が使われています。しかし、よくよく考えてみたらただの変数変換でした。頭の良い人には省略されるぐらい当然の変形なんすかね、、、。丁寧に式を追ってみます。
\( \sum x_i = Y \) として \( 2\lambda_0 \) をかけて変数変換をしてみます。すると
\( 2\lambda_0 Y = Z \\ Y = \frac{Z}{2\lambda_0} \\ dy = \frac{1}{2\lambda_0} dz \)
となります。
これをガンマ分布の式に入れて変数変換してみると
\( f(z) = \frac{\lambda^n}{\Gamma(n)} \left(\frac{z}{2\lambda_0}\right)^{n-1} \exp\left\{-\lambda\frac{z}{2\lambda_0}\right\} \cdot \frac{1}{2\lambda_0} \\ = \frac{\left(\frac{1}{2}\right)^n}{\Gamma(n)} z^{n-1} \exp\left\{-\frac{1}{2}z\right\} \)
となるので、自由度 \( 2n \) のカイ二乗分布に一致します。
本題に戻りまして、以上のことから解答は
\( 2\lambda_0 \sum x_i \lt \chi^2_{2n, 1 – \alpha} \)
となります。
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