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統計検定1級(統計数理)の合格体験記【取得の意義・勉強時間・勉強方法】

統計検定1級統計数理についに合格しました。そして統計応用(医薬生物学)は今年も落ちました、、、

このブログを振り返ってみるとおそらく2019年頃から統計に興味を持ち始めたようなので、約4年ほど取り組んで本当にようやく合格できたというところです。

中高時代から数学が苦手で興味もなかったことを考えると、よくやったなと自分では思いますが、一般的には成功とは程遠い経験談ですね。とはいえ何とか合格できましたので、失敗を含めた経験談として統計数理合格までの道のりをまとめてみたいと思います。

そもそも統計検定1級とは

これから統計検定の受験を検討する人のために、まず試験の概要とそこから得られるものを書きたいと思います。
統計検定:Japan Statistical Society Certificate

統計検定1級は日本統計学会が公式認定している統計学に関する検定です。試験は統計数理、統計応用の2つに分かれており、統計応用はさらに人文科学、社会科学、理工学、医薬生物学に分かれ、この中から一つを選択します。

統計数理、統計応用の両方に合格すると無事1級合格となりますが、片方ずつの受験も可能です。なお1級合格となるためには、片方を合格してから9年以内にもう片方を合格しなければいけません。

試験は90分の筆記試験で、大問5問の中から3つを選択します。試験は年に1回で、11月に行われています。

難易度ですが「定量的なデータ解析に深くかかわるような大学での専門分野修了程度(統計検定公式サイトより)」とのことで、かなり難しいです。他の級と異なり、年に1回しかない、というぶっつけ本番での力が試される点も、合格のハードルを上げていると言えます。公式ページにデータがありますが、概ね合格率は20%前後となっています。

また統計検定は他に準1級から4級まであり、これらはいずれもCBT形式で試験会場でパソコンを使って選択式の問題を解きます。過去にプールされた問題から出題される形なので年に複数回受験することができます。

準1級に関しては出題範囲の幅が広く、場合によっては1級より難しいとも言えるようです。

2級については以前に受験しましたのでこちらの記事を参考にしてもらえると嬉しいです。

統計検定2級に合格したので勉強内容・出題範囲・参考書・当日の感想についてまとめる

統計検定1級の受験の意義と得られたもの

なぜ統計検定を受けようと思ったかとそこで得られたものをざっくり書いていこうと思います。

2019年の休暇中にふと「このまま普通の臨床医をやっていくのは何か違う気がする」と思い立ち、医学以外に専門性の高い知識を身に付けたいとの思いと、当時臨床試験の意味を調べることにハマっていたことから統計検定を受けようと勉強し始めました。

統計検定を医師が受験する意味

実際やってみて思ったのですが、基礎研究、臨床研究をやる上で統計の最低限の知識を身に付けたいと思うなら正直2級くらいで良いと思いました。例えば私が医療統計YouTubeにあげているような統計上の問題点について理解するのであれば、2級あたりまでの知識があれば足ります。

スキマル|医療統計YouTube

専門的なことを調べ始めるとキリがないですし、数学的に踏み込もうとすると膨大な時間がかかりますので、医学研究の背景的な知識の基本を押さえたいということであれば2級までとして、あとは実際の研究に取り組みながら学習していけば良いと思います。

ただ、疫学で専門的にやりたいような人は1級まであっても良いのではないでしょうか。しかしそこまで目指すにしても数理で大学4年分までの知識がいるかは若干疑問が残りますが、、、。それよりも直接的に因果推論など実践により関係の深い部分の勉強を進める方が良さそうです。

個人的に統計検定から得られたもの

統計検定1級の受験で個人的に得られたと感じたものは、まず「多分野に共通しうる数学的な背景知識が身につく」という点です。大学での統計学の授業は(聞いてないのもありますけれど)圧倒的に時間が不足していると思いますし、理解も不十分なまま終わっていました。医療者向けに数式なしで理解するための本などはたくさんありますが、やはり本当にどのようなことをしていて、どこが問題なのかは数式を含めた背景知識がないと身につきません。2級までは無理やり問題の形式を暗記していっても解ける気がしますが、1級の問題はきちんと数学的な背景を理解していないとできないように思えたので、数学的な素養を身につけるには良かったと思いました。

この数学的な素養がとても良いのは、一種の言語のようなものであり、他の分野でも応用が効きうるという点です。例えば機械学習など医学から幅を広げた分野での研究をする場合にも数学の知識は有効です。統計学はもちろんのこと、その背景にある線形代数、微分積分学を理解することは応用の範囲も広く、非常に役に立ちます。

また、統計応用では問題を解くことで、実際的なシチュエーションでの統計学の使用方法やその理論的な流れを追うことができますので、メタアナリシスや生存時間分析のような医薬に専門的な分野についても理解が深まります。とはいえ、まだ統計応用は受かってませんが、、、

というわけで数学的素養と臨床研究の統計的な背景知識が充実する点は保証しますが、勉強にかかる膨大な時間とのバランスを考える必要があります。

やりたい分野がすでに細かく決まってるなら、そのことを集中してやればよいので、医師に検定1級を強くお勧めする必要性はやはりそこまでないような気がします。

実際にやった勉強について

では続いて、実際何をやってきたか、についてです。応用は受かっていないので、統計数理に関して触れたいと思います。

概ね『現代数理統計学の基礎』と過去問を中心に勉強を進めていました。『現代数理統計学の基礎』の練習問題や過去問を解き、わからない部分についてはインターネットや書籍で調べつつ、同じような概念に何度も引っかかってわからない場合やネットで上手い回答がない場合はあらためて自分で記事にまとめるということを繰り返してきました。この経緯で過去にまとめた記事や参考書はこちらのページにまとめた通りとなっています。

統計検定1級の試験範囲と過去の記事・お役立ちサイト・参考書をまとめてみた【統計検定1級対策】

下記の反省点で述べますが、本番で初見の問題を解くためには練習問題を解いて解答を見るばかりでなく、もう少し定義や証明にきちんと時間を割くべきであったと思っています。

過去の記事と記憶を辿ると2019年〜2021年の初めての受験の時までは『現代数理統計学の基礎』や他の参考書を毎日通勤電車で読んでおり、朝方子どもが起きる前の時間で練習問題を解いたり、解答例の記事をアップロードしていました。iPadで毎日数式を画面に書き込むかなり怪しい通勤者でした笑
この頃は結構統計にハマり込んでいたので1年くらいは平日1日1~1.5時間ほどを勉強に充てていたのではないかと思います。臨床の勤務と育児もあったので正直これ以上は時間を割けませんでした。地道ながらに勉強が持続できたのはブログによるアウトプットのおかげが大きかったので、なんらかの形で自分の目に見えるアウトプットをすることは時間がかかるとしても必ず役に立つと思います。

2021年〜2022年は統計応用のメタアナリシスの記事や因果推論の記事を書いていたようなので、徐々に興味の枠が広がっていた気がします。それに合わせて統計数理の勉強時間は減っていました。1−4月ごろはしばらく興味のある分野を勉強し、9月ごろから再度統計検定に向けて過去問を解いたり、『現代数理統計学の基礎』を解いたりし始めました。興味のある分野として臨床統計関係の勉強をした分、2022年は統計応用の成績は上がりましたが、合格はしませんでした。

今年2023年は大学院に入り、平日時間があまり取れず、通勤時間という勉強時間の聖域が無くなった分、勉強そのものがあまりできませんでした。2ヶ月前くらいに少しずつ過去問の解き直しをやり始め、記憶を取り戻し、なんとか受かった感じです。

最後の方は勉強時間も少なくなっていましたが、思い出すのもさほど時間を要しませんでした。これはおそらく初めての分野を学習するときによくあることで、最初のうちは知識の下地を作り込む一定の時間が必要ですが、一度土台ができてしまえばあとは多少間隔をあけたり、幅を広げても良いというイメージなのではないかなと思います。初めての第二言語を勉強する時と同じで、文法や基本単語を徹底して時間をかけて連続的に覚えないといけない期間がありますが、一度できてしまえば、多少間隔をあけても大丈夫という感じでした。

統計検定1級を受験する人へ、自分の反省点を踏まえて

今から振り返って反省点を考えてみます。

まず初めに考えておきたいのは、そもそも統計検定1級が必要かどうかです。上述したように臨床研究で必要な内容を逸脱した知識も多いので、半分くらい趣味になってしまうことは考慮しないといけません。本当に必要なのか、あるいは他の試験(データサイエンティスト検定とか)や級が望ましいかどうかはしっかり考えた方が良いでしょう。資格受験はせず、自分の必要な部分だけ勉強するというのは理想的ですが、何も指針なしで自学自習するのも辛いところがあります。普遍性が高い範囲というと、やはりまず2級あたりから目指していくのが妥当なラインのように思いました。

続いて方法論ですが、1級は1年に1回の試験なので、過去問もさして沢山溜まっておらず、本番は見たことのない問題が登場してきます。応用問題を初見で解けるための力が必要になります。

そこで大切にしておけば良かったと反省しているのは、ただ問題をたくさん解くのではなく、基本的な定義をきっちりおさえて、それぞれの定義の結びつきである証明を自分でできるようにするということです。仮に自分で一度記事に解説を書いていても、自分で0から再現できるようにできていないと結構忘れてしまいます。

複合仮説の場合の帰無仮説・対立仮説の定義、同時確率分布の微分など、基本的な内容でも、ちょっと出し方が見慣れないものだと意外とできなかったりすることがあったので、定義や概念の見直しはとにかく重要です。逆に言えば、2023年の本番はさほど正答率高くなかったと思ってますが、きっちり基本をおさえていれば合格できたので、応用問題を無理に全部解けることを意識するよりも、確実に基本をおさえることの方が良さそうです。

続いて参考書ですが、私のように0からやる場合、入門として「具体的でわかりやすいもの」+「しっかりした長く学ぶもの」+「統計検定1級の教本(範囲と内容把握のため)」をセットで買っていくのが良いと思います。統計検定に対して買った参考書の類は先ほどのページでまとめています。

統計検定1級の試験範囲と過去の記事・お役立ちサイト・参考書をまとめてみた【統計検定1級対策】

長く学ぶ本については、X界隈やネット上でよくおすすめされているのは通称赤本と言われる『統計学入門』、『現代数理統計学の基礎』、『現代数理統計学』あたりでしょうか。あとあまり紹介されていませんが、最近目を通して良かったのは邦訳書である『確率と統計(デグルート&シャービッシュ著)』ですかね。証明や具体例がかなり丁寧に書かれていてベイズ統計も含めてカバー範囲が広くておすすめです。

当ブログのコンテンツを見ていただくとわかるように1番のおすすめは練習問題と解答が充実している『現代数理統計学の基礎』ですが、好みに合うものを一冊程度選べればどれでもある程度は良いかなと思っています。

統計検定公式の教本は範囲や出題内容の把握には役立ちますが、統計数理は説明がコンパクトすぎて単体では分からなかったり、統計応用はあまり内容と範囲が合致していなかったり、これだけで役に立つものではありません。他の参考書で学びながら参照にするイメージが良いと思います。

実際の勉強方法ですが、1〜2年分の過去問をやって難易度や雰囲気を掴みつつ、含まれる基礎的な内容を順番に積み立てていくのが良いと思います。『現代数理統計学の基礎』でいえば1章〜8章まではほぼ必須の内容だと思いますので、順番に全て見ていく必要がありそうです。過去問からやるべき勉強を組み立てていくというスタイルや勉強の範囲、参考書は特別に悪かったことはないかなと思っていますが、勉強方法をもう少し工夫して概念や証明の理解に力をいれれば遅いように見えてより早く合格に結びついたのではないかなと思いました。

まとめ

というわけで合格までの経緯を振り返って伝えたいことをまとめます。

1、専門でない人には、合格に膨大な時間と労力がかかる試験なので、必要性と級はよく考えて受験を考えた方が良いです。

2、学習の過程でしっかりとした数学的な基礎と応用力は身につく良い試験ではあると思いますので、今後もこういった分野に関わりたいと思う人にはおすすめできる質の良い試験です。

3、ブログでのアウトプットはモチベーション維持や理解を深めるためにも大変有用でした。ただ調べながら記事を書くことよりも、何もなしで基礎的な概念から導出する能力を磨くことのほうが本番で成功するためには大切だと感じました。

さて、ようやく道半ばまで来ましたので、あとは統計応用ですね。できれば大学院にいる4年以内に統計応用の合格を目指したいと思います。

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