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SARS-CoV-2のPCRと抗体検査について

JAMAの論文で新型コロナウイルスのPCRと抗体検査の

検査精度を簡単にまとめた論文がみやすかったので紹介します。

 

Interpreting Diagnostic Tests for SARS-CoV-2-JAMA

 

PCRと抗体検査の性能は?

 

よく見たら横浜市立大学の微生物学の先生が書かれていますね。

figureが分かりやすくて、国内ではできませんがPCR検査の他に

IgM抗体、IgG抗体がいつごろから陽性になって推移していくかが

書かれています。

 

ここで興味深かったのは2ページ目の最初の段落で

PCR単体での感度は51.9%だったが、IgM抗体と組み合わせることで

感度が98.6%まで上昇した、との記載。

 

元の論文を辿るとこちらでした。

Profiling Early Humoral Response to Diagnose Novel Coronavirus Disease (COVID-19) | Clinical Infectious Diseases | Oxford Academic

 

武漢で得られたCOVID-19の確定例82名(PCR陽性)+疑い例58名(PCR陰性) 

の血漿208サンプル(取られた日にちがそれぞれ異なり発症後1-25日まで)

を使用し、PCRの他IgG, IgA, IgMを検査したというものです。

 

ちなみにIgGやIgMとは免疫グロブリンと呼ばれる

感染後に体内で作り出される免疫の役割のあるたんぱく質の種類で

他の細菌やウイルスでも、それぞれ特異的に上昇するので

EBウイルスやサイトメガロウイルスといったウイルス感染の

診断に使われています。

IgMの方が先に上がるがその後早期に低下し、IgGは長期にわたって

残る場合があります。

 

組み合わせて感度98.6%というのは先ほどの

発症後日数がばらばらな血漿サンプルに対して使用した結果ということですが

めちゃくちゃ優秀な数値です。

感度・特異度95%程度と見積もって考えると陰性尤度比も0.05となり

検査することで否定にも有用となります。

ただ、これは仮定の話で論文では発症者に対しての結果のみ記載されており

特異度は出ていません。

また実際の検査では発症後の日にちがそこまでばらつきがあるのか

あるいはもっと発症直後が多いのかというあたりも異なると思うので

対象者によって数値は異なるとは思います。

(感度・特異度と尤度比については同日記事に書いてみました)

medibook.hatenablog.com

なぜこうなるかというとPCRは先に出した論文のfigureで

水色の線(nasopharyngeal swab PCR)をみてもわかりますが

発症後時間が経つにつれて、検出できる確率が下がっていきます。

 

それに対してIgMはピークがやや遅いので

PCRでは陰性になるタイミングを補完する形となるわけです。

 

後半の論文では発症後5.5日を過ぎたあたりからPCRとIgM抗体の

検出率が逆転するとされています。

 

 

ただ、これがどう役立てられるかというと難しいところで

IgM抗体もおそらくすぐに出すことは難しいと思います。

今実際にやられている他のウイルスに対するIgM抗体の検査でも

4-5日はかかっているので時間がかかります。

来てもらって検査したところで4-5日では隔離期間が長く

その間どこでどうしていてもらうのかが問題になります。

うまい使い方があれば良さそうですが、、、。

 

  最近のPCR検査事情について

話はずれますが

大阪がPCR検査での陽性率を

経済活動再開の独自基準の一つに組み込んでいる、ということで

陽性率に関しての話題が徐々に増えている気がします。

 

4/17と少し前の記事になりますが、山中伸弥先生がHPの中で

アメリカのPCR検査数増加の必要性を書いたNY timesの記事を

引用されていました。

Coronavirus Testing Needs to Triple Before the U.S. Can Reopen, Experts Say – The New York Times

 

感度が低いとはいえ、検査数がある程度ないと、実態が把握できない

という理論が背景にあるようです。

 

流行地域かどうかにも依ってくると思うのですが

現場としては悩みどころもあります。

検査数を増やす、ということをどう行うのか。

 

単純に受診する人を増やすという意味であれば

うまく医療機関のキャパシティーを考えてコントロールしないと

大規模な院内感染が続発する事態になりかねません。

 

実際今でも発熱の患者さんは本人、家族ともに心配され

コロナの可能性はないですか、検査できませんか?と口々に聞かれます。

入院だろうが外来通院だろうが不安はもっともで

安心を得たい、という心理はその通りだと思います。

もちろんこちらとしても感染者院内や外で広げたくない

不安と責任はとても強いです。

 

画像検査、採血も行って明らかに非典型の所見しか揃わない場合

あるいはもちろん他の疾患の診断が明確な場合は

さすがに検査は不要じゃないか、と答えます。

 

昨日から”受診の目安”が改定され

より軽い症状でも相談センターへ電話を、ということになっています。

mainichi.jp

”発熱4日以上”という条件は厳しすぎるにせよ

今の条件は結構すぐに相談が来そうです。

保健所が心配ですし、どこまでを病院に送るのかも

心配があります。

 

今後段階的に経済活動を再開していくには

感染の動向を見極める必要性が高くなると思われますが

PCR検査や受診者を増やして何とかしていこう、という方向は

かえって現場の混乱を生む可能性があり

よりより手段がないか願うばかりです。

 

あと個人的にわからないのは

PCR検査の陽性率が重視されるのはどういった根拠なんでしょう。

大阪府の独自基準について

記事にはエビデンスがあるわけではない、とありますが

多少何らかの根拠はあるのではないでしょうか・・・。

www.tokyo-np.co.jp

どなたか根拠をご存知でしたら教えていただきたいです。

 

行われたPCR検査の陽性率から割り出すことができるのは

「コロナ疑いとして検査基準に当てはまる人の有病率」であって

「健常者含めたすべての人の有病率」にはならないと思うのですが

それでも役に立つという前提なのでしょうか。

 

今後の方針とその根拠がどうなのか、気にかかります。

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