今後の日本の方向性を考える「シン・ニホン AI×データ時代における日本の再生と人材育成」

日本の経済成長は今や右下がり、低迷がつづいています。アベノミクスによって株価は上がっていたものの内実が何か変わっていた様子はありません。今後の日本に必要な方向性とはどういう形なのか。それを書いた良い本を紹介します。

 

最近本棚に本が溜まってきていたので、少しずつ裁断して自炊しているのですが、久々に見た本にこんなのがありました。

イシューからはじめよ ― 知的生産の「シンプルな本質」

イシューからはじめよ ― 知的生産の「シンプルな本質」

  • 作者:安宅和人
  • 発売日: 2014/09/01
  • メディア: Kindle版
 

10年も前の本になりましたが、問題抽出とその解決への道のりの方法論を書いた本です。これがなかなか面白かったので作者について調べてみると、2020年2月に新しい本を出していたことが分かりました。それがこちら。 

 

著者の安宅和人氏は現在ヤフーCSO(チーフストラテジーオフィサー:最高戦略責任者)であり、内閣府総合科学技術イノベーション会議に参加。またもともとはマッキンゼーに勤務しており、その後イェール大学脳神経科学教室で博士号をとるなど、産官学全てを経験している稀有な存在です。その総合的な視点を活かして、日本の現状と今後の方向性を語ります。

 

日本のヤバい現状

 

冒頭では日本の状況がいかに危機的か相当量のデータを用いて説明されます。現在日本のGDPはアメリカ、中国に次いで第3位ですが、曲線を見る限りは横ばい~右肩下がり。徐々に第4位のドイツに近づかれている状態です。また、一人当たりのGDPをみると、1989年には第4位だったのが現在は第26位。高齢化の影響も受けうるものですが、低迷してきています。

 

著者はこの現状をデータ×AI技術の競争に立ち遅れたことによるものだと指摘しています。例えば、現在の企業の時価総額のランキングをみてみると、以前には上位に入ってこなかった企業として「Apple」「Amazon」「Facebook」「アリババ」などIT企業が名を連ねることが分かります。この中で日本の企業があるでしょうか、、、一つとしてありません。

 

またこれらの企業を技術的に支える学問分野での遅れも深刻です。科学技術分野での論文数は低迷しており、中国にはとっくに抜かれている上、インドにも近年追い抜かれています。

 

論文は数だけが問題じゃないだろうという意見もあると思いますが、(全然引用されない論文や科学的に正しくない論文がたくさんあってもしょうがない)引用数を加味したTop10%(or1%)補正論文数のシェアも右肩下がりです。グラフは本書をみて頂けると良いのですが、米国も急激な低下を見せており、大部分が中国に置き換わっていることがわかります。

 

学問の領域は企業の技術革新を下支えする部分もあると思いますが、こんなに深刻な状況とは知りませんでした。

 

肌で感じる教育の問題

 

学術領域がどうしてこんな散々たる状況なのか。

 

実際、医師の例を考えてみます。一般に卒業すると、研修医として大学病院や近隣の病院で働き、あとで大学院に戻って、研究を始めます。

 

ところが、この大学で学びなおす意義やメリットがどうも明確でないことが多いのです。普通に臨床医(病院や医院で患者をみる医師)の仕事をするなら、技術的には博士号をとったりしなくても変わらない部分は多いです。

 

むしろ博士号をとるために大学に戻ると、ほぼ病院にはタダ働きさせられ、合間にバイトで生活費を稼ぎ、さらにその合間で研究をして論文を書く、、、大学でのキャリアアップには必要かもしれませんがこの生活にメリットを感じにくいのは事実です。

 

もちろんどの大学や科でも全く同じとは限らないと思います。ただ、海外に比べてコストがかけられていないのは確かで、潤沢な資金提供を受けながら本当の意味で研究に集中できる環境なんてものは得られていません。

 

著者の主張では大幅に予算を変えるというものではなく数%でいいのでシフトすべきだとされています。個人的にはもう切にそう願います。

 

データとAIがすべてなのか

 

どうしてもタイトルに”AI×データ時代”と銘打ってあり、そこだけが重要であるかのようにみえますが、データ、統計やAIはあくまで手段であって解ではないと思います。あくまで、「データを入力することで結果を出力する」道具で、問の答えは人間が考えなければいけません。

 

例えばAIでいくと”alpha go”が碁打ちでプロに勝ったという話がありますが、これは碁に限った話で、汎用性のあるAIではありません。人間のプロと違うのは、「勝つための碁の打ち手」という出力はできますが、碁の指導はできないですし、その思考過程を説明・解説したりすることはできません。

 

「データの入力から結果の出力」といった作業は人間が行うと大変な時間を要するものでも、ごく短時間で行うことができる、ということがAIの利点であり、そこでできた時間の短縮を、問や答えを考える時間にあてることができる。AIと人間は相補的なものだと思います。

 

本書にもAIは全能なものではない、ということに触れられており、今後の社会において必要な人材は以下の3つを兼ね備えた人としています。

 

”ビジネス力” 問題の定義や整理を行う

”データエンジニア力” 問題に対してデータ処理を実装する

”データサイエンス力” 実装のための知識をもつ

 

これらをバランスよく備えた人間が今後の問題に取り組み解決していくことができると言えます。

 

雑感

 

自分はまだ教育や人材管理をする側の人間ではないので、この本のもつ情報の中でも一部のみしかくみ取っていないかもしれないですが、教育や人材管理、データサイエンスに取り組まれているような人であれば一度読んでみることをお勧めします。

 

日本に現状に危機感をもって、今後を考える足場にするのには最適な一冊だと思います。

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