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【書評YouTube】「数学が見つける近道」【第1回】

(上記動画のスクリプトを元に再構成したブログ版です)

今回は数学の魅力を伝える一冊、「数学が見つける近道」の紹介をします。この本は、数学がどのようにして私たちの思考や計算の「近道」を提供してきたか、さまざまなエピソードを紹介していくエッセイです。著者のマーカス・デュ・ソートイ氏は群論を専門とする学者で、英国国営テレビBBCの数学史に関する番組も構成し、一般向けの数学啓蒙活動も行っています。過去の書籍も含め、その分かりやすさと面白さで高く評価されています。

目次

  • 出発
  • 第一章 パターンを使った近道
  • 第二章 計算を使った近道
  • 第三章 言語を使った近道
  • 第四章 幾何学的な近道
  • 第五章 図解を使った近道
  • 第六章 微分を使った近道
  • 第七章 データを使った近道
  • 第八章 確率を使った近道
  • 第九章 ネットワークを使った近道
  • 第十章 不可能な近道
  • 到着

目次ですが、数学の技法がどのようにして近道を見出してきたかがその技法ごとに分けられています。どの部分から読み始めても楽しめる構成になっているので、自分が興味のある箇所から読み進めることをお勧めします。

オススメポイントとオススメしにくいポイント

次に、本書の特におすすめするポイントをご紹介します。まず、多岐にわたる分野で数学がどのように実用的な近道となっているかを体験できる点です。また、数学の応用に関する多様なヒントが読み物として楽しめます。この本は、古代バビロニアから現代の技術まで、時代を超えた数学の手法を幅広くカバーしています。

象徴的なのは、カール・フリードリヒ・ガウスの少年時代のエピソードです。1から100までの数を足す問題に対し、数学的な洞察力を駆使して効率的な解法を見つけ出しました。これはいわゆる現在のシグマ計算の式として知られていますが、この方法こそが時間を大幅に節約する「近道」です。このようなエピソードを通して、数学がいかにしてこの「近道」を見つけ出してきたかを学べます。

次々繰り広げられるエピソードを通じて古代から現代に至るまで、数学による思考法が人類の歴史において普遍的なものであることを実感させてくれます。この数学的アプローチは、いずれも現実の問題に対処するために生み出されたものであり、これからの有用性も感じられます。

数学史を描いた読み物としても楽しめるのが、もう一つのおすすめポイントです。「犬が微分の考え方ができるのか?」や「アイザック・ニュートンの投資に関する意見」などユーモアあふれる話が多く純粋なエッセイとしても面白いです。

ただし、エッセイであるため、数式や具体的な数学的解説はそこまで深くなく、すぐに実用できる、というわけではありません。また、すでに数学に精通している方には、物足りない部分もあるかもしれません。精通しているというほどではないですが、確率についての話は、自分でも知っている内容も多かったように思います。

まとめ

数学の思考法を理解し、その幅広い活用法を体感できる一冊です。読み物として楽しむ一方で、実用的な内容を得るためには、別であらためて勉強する必要はあります。一般向けに書かれているため、数学の基本的な理論を理解するのに最適な一冊と言えるでしょう。

この本の大まかな立ち位置ですが、一般啓蒙に長けた著者ですので、背景知識なく読むことはできます。とはいえ、基本的な高校数学レベルの知識はあった方が良いかもしれません。この本は理論よりもむしろ実践に重きを置いたエッセイであり、上述のように数学的に詳しい理論は展開されませんので、本質的な理論はあらためて勉強し、読者が見出す必要があるでしょう。

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