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イマヌエル・カントの思想③

前回までの記事はこちら

イマヌエル・カントの思想① – 脳内ライブラリアン

イマヌエル・カントの思想② – 脳内ライブラリアン

 

前回までの記事でカントが「理性」が矛盾を起こすさまをアンチノミーを用いて説明しました。つまり、「理性」は空間・時間の概念を通す事が必要で、それ以上のことを説明しようとすると、矛盾を起こしてしまうということでした。

 

カントは同様にアンチノミーを用いることで人の自由と道徳について論じます。

 

第三アンチノミー

ここで用いられるのが第三アンチノミーです。

内容としては

テーゼ:世界には自由による因果性もある

アンチテーゼ:自由なるものは存在せず、すべてが自然必然的法則によって起こる (「カント入門 石川文康著p.23より引用」)

です。

 

要するに、人は自由意志で行動しているのか、何やら外からの影響を細かく考えると実は自由意志なんてないのか、という問題です。

 

「風が吹けば桶屋が儲かる」と言われますが、こうなると桶屋が儲かったのは自分の意志や行動ではなく、周りの影響が巡り巡ってそうなったということになり、自由なんてないんじゃないかということになります。

 

カントは上記の命題について両者ともに真であると考えたうえで、解決策を考えました。

 

テーゼは「カント入門 p.103」に例示してあるのですが、犯罪者について考えてみると現実的には真と認めているのが分かります。犯罪者に対して元々の根本原因を考えて、たまたま色々な因果関係と自然法則によって起きたこととして天災=無実と考えるでしょうか。考えませんよね。逆にアンチテーゼについても真といえる部分はあり、現代でいうと原子レベルや脳神経細胞のレベルまで考えたら様々な自然法則の結果として病気が起きたり、事故が起きたりしているのではないでしょうか。

 

まあこの時点で異論はどうしても出そうですが、少なくともどちらかが正しいとまでは今の科学でも証明できないわけです。

 

第一アンチノミーと異なって、両方「真」となった場合はどう考えるのか。両方「真」の場合は命題の条件が部分的に限られる、ことになります。

 

例えば

テーゼ:8時になると外は明るい

アンチテーゼ:8時になると外は暗い

という命題を考えると、これはある意味どっちも正しいですね。ただし、正確には2つの条件がもっと部分的であることが必要です。テーゼは「朝の8時」とする必要がありますし、アンチテーゼは「夜の8時」と条件を部分的なものに限る必要があります。

 

ということはこの第三アンチノミーも部分を区切ればどちらも成立しているということになります。

 

自由はどこにあるのか

では、どのように区切れば自由のある場所が見つけられるのか。

 

ここでカントは第一アンチノミーからみつけられた「時間・空間」の概念が存在しない「英知界」を考えます。

 

前回記事で書いたように「時間・空間」の概念があって、自分たちが普段認識しているのが「現象界」で、それらの概念のないのが「英知界」でした。

 

時間・空間の概念がある「現象界」限りは原因→結果を考える、因果律から離れられません。(この辺の細かい話は一部端折っているので気になる方は「カント入門」をお読みください)逆に言えば、時間・空間の概念がなければ因果律から離れることができ、絶対的な始まりとなるわけです。つまり第三アンチノミーでみられたテーゼですね。これをカントは「自由」と呼び、自由の場所をここに確保しました。

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(カント入門 石川文康著 p.106 図5より引用)

イメージとしてはこのような感じになります。

 

真の道徳

真の道徳についてもカントはこれと同様に英知界にそのありかを求めています。現象界でみられる善は、英知界では善意志(いわゆる物自体)として存在しているとしました。関係性を図示しました。

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この英知界の善意志というのは先ほどの自由と同様に「時間・空間」の概念を外れており、因果律にも支配されないため、「理由によらない・条件付けされない」ような尊敬される行動を指します。

 

ここでようやく定言命法につながります。定言命法というのは、この「善意志」がどのようなものかを確かめるためのいわば「リトマス試験紙」と「カント入門」の中でも紹介されています。

 

この辺は具体性がないと分からなくなってくるので、次回具体的な事例を通してまとめます。

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