続いて分布収束の問題です。
不偏分散と母分散を用いた式が分布収束することを示す問題ですね。
\[
\frac{n}{n-1} \frac{1}{n} \left\{ \sum (x_i – \mu)^2 \right\} \to \sigma^2
\]
② 後半の項について
後半の項について見てみると
\[
\frac{n}{n-1} \left\{ (\bar{X} – \mu)^2 \right\}
\]
ですので、\(n \to \infty\) の極限を考えると、大数の法則により \(\bar{X}\) は母平均 \(\mu\) に一致していくので
\[
\frac{n}{n-1} \left\{ (\bar{X} – \mu)^2 \right\} \to 0
\]
以上から、不偏分散は \(n \to \infty\) のとき母分散に一致することが分かりました。
③ 中心極限定理の適用
不偏分散の期待値が母分散と一致しており、分散が
\[
\mu_4 – \sigma^4
\]
であったので、中心極限定理を使えばよさそうな雰囲気があります。
不偏分散のままでは適用しづらいため、ばらして変形します。(1)で用いた \((x_i – \mu)^2\) の形に持ち込むことがポイントです。
\[
\sqrt{n} (V_n^2 – \sigma^2) = \sqrt{n} \left\{ \frac{n}{n-1} \frac{1}{n} \sum (x_i – \mu)^2 – \frac{n}{n-1} (\bar{X} – \mu)^2 – \sigma^2 \right\}
\]
ここから、どうせ \(0\) になるであろう \(\bar{X} – \mu\) の部分を外に括り出して変形していきます。
\[
\sqrt{n} \left\{ \frac{n}{n-1} \frac{1}{n} \sum (x_i – \mu)^2 – \frac{n}{n-1} (\bar{X} – \mu)^2 – \sigma^2 \right\}
\]
\[
= \frac{n}{n-1} \sqrt{n} \left\{ \frac{1}{n} \sum (x_i – \mu)^2 – \frac{n-1}{n} \sigma^2 \right\} – \frac{n}{n-1} \sqrt{n} (\bar{X} – \mu)^2
\]
④ それぞれの極限
まず {} 内にある第1項と第2項について見ていきます。
\[
\sqrt{n} \left\{ \frac{1}{n} \sum (x_i – \mu)^2 – \frac{n-1}{n} \sigma^2 \right\}
\]
\((x_i – \mu)^2\) の期待値と分散は、(1)で示したように \(\sigma^2\) と \(\mu_4 – \sigma^4\) でした。
\[
\frac{n-1}{n} \sigma^2
\]
は \(n \to \infty\) のとき \(\sigma^2\) となるので、中心極限定理を用いると
\[
\sqrt{n} \left\{ \frac{1}{n} \sum (x_i – \mu)^2 – \frac{n-1}{n} \sigma^2 \right\} \to N(0, \mu_4 – \sigma^4)
\]
⑤ 第3項の処理
次に見るのは、第3項
\[
\frac{n}{n-1} \sqrt{n} (\bar{X} – \mu)^2
\]
\(\frac{n}{n-1}\) は \(n \to \infty\) のとき 1 になるので、ほっときます。
また、\(\bar{X} – \mu\) は \(0\) になるものの、\(\sqrt{n}\) が厄介です。そこで、2乗となっている部分を分解し、以下のように考えます。
\[
\sqrt{n} (\bar{X} – \mu)^2 = \sqrt{n} (\bar{X} – \mu) \cdot (\bar{X} – \mu)
\]
こうすると、中心極限定理が使えるので
\[
\sqrt{n} (\bar{X} – \mu) \to_d N(0, \sigma^2)
\]
\[
(\bar{X} – \mu) \to_p 0
\]
となります。
このように、分布収束と確率収束するものの積は収束した値の積で表すことができる(本書で記載のスラツキーの定理)ので
\[
\frac{n}{n-1} \sqrt{n} (\bar{X} – \mu)^2 \to 0
\]
となります。
⑥ まとめ
①, ② より
\[
N(0, \mu_4 – \sigma^4)
\]
に収束することが示せました。
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