2022年医薬応用の問1は毎年必ず出てくる生存時間分析の問題でした。テーマとしてはCox比例ハザードモデルです。さほど捻った要素もなくこれは解けました。
(1)
まずはモデルが比例ハザード性を満たすことの説明です。比例ハザード性とは時間経過に関係なく、変数間のハザード関数の関係が比例関係になることですので、それを式から示せれば良いと思われます。x=0のとき、ハザード関数は
\( \lambda(t; 0) = \lambda_0(t) \)
x=1のとき、ハザード関数は
\( \lambda(t; 1) = \lambda_0(t) exp(\beta) \)
となります。比をとればtに関わらずexpβの比例関係にあることがわかります。
(2)
続いては生存時間関数をハザード関数を用いて表す問題。生存時間分析の基本ですね。過去の記事でも扱っています。
まず、ハザード関数の定義に戻って考えてみますと、ある時間tでイベントが起きる確率密度関数をf(t), 分布関数をF(t)として
\( \lambda(t)exp(\beta x) = \frac{f(t)}{1-F(t)} \)
上記の関係から、両辺を積分して
\( \int \lambda_0^y exp(\beta x)dy =-log(1-F(t)) \)
よって1-F(t)が生存関数S(t)となることを踏まえ、対数を外すと
\(S(t;x) = exp\left(-\int_0^t \lambda_0(y)dy\right) exp(\beta x)\)
以上より
\(S_0(t) = exp\left(-\int_0^t \lambda_0(y)dy\right)\)
となります。
(3)
続いては二重対数プロットをとって比例ハザード性を確認する方法を見ていきます。
ヒントに従って(2)の式を用いると
\( \log\left(1-\log S(t;x)\right)\\
=\log\left(1-exp(\beta x \log S_0(t))\right)\\
= \log\left(-\log S(t)\right) + \beta x\)
となります。つまりこれをグラフにするとβxが切片となりその差は常に平行に続いていきます。
(4)
まずハザード比の推定値を計算します。(1)で見たようにハザード比はexpβxで求められますので回帰係数0.06をβに当てはめて
\( \hat{HR} = e^{0.06 x} \\=1.061836… \)
となります。
続いて95%信頼区間を考えます。対数ハザード比が正規分布に従うということなので
\( log\hat{HR} \sim N(\mu,\sigma^2) \)
とすると対数ハザード比の95%信頼区間は
\( \log \hat{HR} \pm 1.96SE \)
で求められます。
あとはこの求めた幅を対数から直せば終了です。
(5)
(4)の結果は1を跨いでいますので、有意差がなく治療効果は有効と言えず、試験結果からは何もわからないということになります。
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