今回は違いを示す単語であるdifference, discrepancy, disparity, distinctionについて勉強してみます。
単語の意味と共起表現
・differnce
the way in which two or more things which you are comparing are not the same
最もシンプルに違いという意味で使われる単語ですね。単語の意味としては二つのものが違う点は何か、というところに焦点を当てています。
なお、共起表現として程度を表す場合は、以下のような語を伴うことが多いようです。
・big, huge, significant, slight
学術面のみならず幅広く使われるのでbigみたいな簡単な単語も含まれていますね。
・discrepancy
a difference between two things that should be the same
さて、違いや不一致という訳語が用いられることが多いdiscrepancy。これは背景に”two things that should be the same”というそもそもは同じであるべきものが異なっている、との意味合いがあるようです。
共起表現としてdiscrepancyを目的とする動詞も「本当は同じであることが前提」とした意図を汲み取れる動詞が多いです。例えば以下のような動詞です。
・reconcile, address, correct, reveal
なおreconcile(和解する、仲直りさせる)の共起表現を見ても、discrepancy, conflict, contradictionが上位に並びます。いずれも「本当は一致してほしい」という裏の意味合いがある単語ですね。
程度を示す共起表現では
・huge, large, serious, significant, slight
などがあがります。上で述べたように主観的な意味付けがあることからserious discrepancyという表現もできるようですね。
・disparity
a lack of equality or similarity, especially in a way that is not fair
「(不平等な)違い」の意味で使われることが多い単語です。
共起表現で目的語とする動詞を見ても、「悪いことである」「問題である」ことが前提として以下のような単語が出てきます。
・widen, exacerbate, eliminate, address
程度を示す表現は上記のものとあまり変わりませんが、動詞にwidenが出てきたように、形容詞もwideがあることが特徴的です。
・huge, enormous, wide
さらに他の形容詞としてどんな種類の「不平等な違い」なのかを表現する語句が多く並びます。
・racial, wealth, gender, income, economic, socioeconomic, ethic
最近は脳卒中の社会的な背景によるリスク因子の研究などが主にアメリカで多く報告されているように思いますが、こうした社会医学的な論文で非常によく見られる表現かと思います。
・distinction
a difference between two similar things
これはdistinctという形容詞からわかるように「(あるものとあるものを区別する、できるような)違い」という意味合いになります。
共起表現として目的語とする動詞としては
・blur, abolish, draw, clarify, emphasize
などでちょっと他の単語と異なります。
blurは「ぼんやりとする」、abolishは「廃止する」といった単語となります。
abolishは制度を廃止するなどに用いられることが多い動詞ですが、distinctionでよくみられるのは“abolish class distinction“という形で「階級制度を廃止する」という表現ですね。
また、”draw”も共起表現にありますが、これは“draw a distinction”=「区別をつける」という群動詞として使われるようです。”draw a distinction between A and B”という形でAとBの区別をつけるという表現にもできますので、結構使いやすい表現かもしれません。
clarify, emphasizeは二つの違っている点に着目するという元々の名詞の意味とも相性が良いので使われやすいことも納得できます。
程度を示す共起表現としては
・clear, sharp, crucial, important
があります。ここまでの単語がhuge, largeなど大きさを示す形容詞が多かったのに対して、distinctionは量的というより質的な違いであることが伺えます。
そのため、「少しの違い」という表現に関してもslightではなくsubtleが使われやすい共起表現となっています。
(単語の意味はこちらから引用Cambridge Dictionary | English Dictionary, Translations & Thesaurus)
(共起表現はこちらを参考にしていますSKELL)
(勉強の方法はこちらを参照中級者から上級者になれる着実な英語の勉強法『英語独習法』レビュー – 脳内ライブラリアン)
医学論文を含めた用例
・discrepancy
We also demonstrated, through propensity score matching, that the difference in initial neurological impairment of the upper extremity resulted in discrepancy of the recovery proportion.
Stroke. 2021 Oct;52(10):3167-3175.
実はこの例のように「単純な意味での違い(difference)が不一致(discrepancy)に繋がった」という、今回紹介した単語が一つの文で二つ使われる文が結構みられます。
この例文では「上肢の初期の神経症状の違い(difference)が回復率の違い(discrepancy)に繋がった」となっています。この研究で示される前は「回復率の違いは証明されていないので、本来ないもの」であったわけなので、discrepancyがあっているのではないかと思います。
This important discrepancy between clinical and preclinical pathophysiologies should be considered
Stroke. 2018 Dec;49(12):3071-3074.
こちらは脳梗塞の再開通についての研究ですが、前臨床段階の実験モデルでは再開通による脳のダメージが大きな要因となっているという結果だったものの臨床ではそうではなかった、という内容です。
なので、前臨床、臨床で本来一致すると思っていたものが一致しないためdiscrepancyという単語がしっくりきます。
・disparity
Such SES-related disparities in outcome may result from differences in comorbidities, risk factors, or access to care. *SES;socioeconomic status
JAMA Network Open. 2022;5(4):e229178.
これも先に述べたように「単純な違い(difference)」によって「不平等な違い(disparity)」が生じている、となっています。
Women have been underrepresented in cardiovascular disease clinical trials but there is less certainty over the level of disparity specifically in stroke.
Neurology. 2021 Nov 2;97(18):e1768-e1774.
gender disparityというのもよく使われる表現ですね。心血管イベントに関連した臨床試験では女性の被験者が少ない、というのは少し前からよく指摘されている問題です。こちらの論文によると脳卒中に関しても同様であるとの指摘がされています。
Racial disparity in IV tPA and MT utilization persists with particularly lower frequency of usage of both acute stroke treatments in Black patients compared with White patients,
Stroke. 2021 Aug;52(8):2562-2570.
こちらは人種による違いについての研究ですね。日本からのものはあまりみないのですがこうした人種、性、収入による医療の違いの論文では必ず出てくる単語であると思います。
・distinction
A key feature of our algorithm is the distinction between isolated and combined tremor syndromes,…
J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2020 Aug;91(8):822-830.
「アルゴリズムによってisolatedとcombined(他の症状を伴う)tremorを区別しているのが特徴」と述べられています。「区別をつけるための違い」というのがdistinctionに独特な点です。
余談ですが、この論文は振戦に対する診断アプローチのレビューで、実臨床に応用しやすく面白かったです。
This study addresses whether the distinction between TICI2b and TICI3 reperfusions shows a clinically relevant difference on functional outcome.
J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2018 Sep;89(9):910-917.
こちらもdifference, distinctionが一文の中に存在している例ですね。この論文は脳卒中の再開通と機能的なアウトカムの研究ですが、“血管の開通の程度を区別“することで“アウトカムの違い“を示せるかどうか、を問題としていることがわかります。
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