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【医療統計YouTube】ソフトエンドポイント・ハードエンドポイント【第10回】

医療統計YouTube更新しました。第10回はシリーズ「ランダム化比較試験を吟味する」の第2弾です。

前回に引き続きアウトカムに焦点を当てたテーマで、今回は「ソフトエンドポイント・ハードエンドポイント」について見ていきます。

動画内で強調したいこととしてはソフトエンドポイント×非盲検(あるいはPROBE法)というのはバイアスが結果を歪める危険性が高いということです。論文不正が大きな問題となったディオバン事件の研究も、ソフトエンドポイント×PROBE法が問題点の一つでした。この事件はさらに多数の問題を含んでいますが、、、。

また、盲検化されている場合でも、1990年代頃までの日本のやや古い臨床試験においてソフトエンドポイントが多用されている点は注意が必要です。全般改善度のみで承認が通っている薬も少なからずあり、その結果を実臨床で考えた時の外的妥当性はどうなのか、改めて吟味が必要だと思います。傾向スコアマッチングなどの手法を用いて再評価したところ、客観的指標では効果が薄いことが確認される場合もありますので、背景因子をある程度調整した観察研究にも着目することが必要です。

つい最近の話題でいえば、緊急承認はならず継続審議となった「ゾコーバ」も症状の改善(ソフトエンドポイント)とウイルス量の減少(代用エンドポイント)が効果として推されていました。さらにそれに加えて“症状の改善“は後付け解析でしか差が大きく出ていないという始末。客観的指標としての問題点があまりに多いことがわかるかと思います。継続審議になった理由として「有効性が十分に示されていない」という指摘は至極真っ当で安心しました。

ただ、ソフトエンドポイントはなんでもダメというわけではありません。患者さん自身のQOLや改善の実感にも重みをおいて「患者報告型アウトカム」ということが勧められる流れもあります。効いている実感がある、患者さんが辛くない、ということは指標の一つとして大切です。こうしたソフトエンドポイントでしか検出が難しい状況もあります。

  

疾患や薬剤の特徴に応じて適切なエンドポイントは何なのか、また論文を読む側としては果たしてどんなエンドポイントで良い結果が得られているのか、患者さんに必要なことは何かをエンドポイントの分類を意識しながら考えることが必要だと思います。

次回は引き続きアウトカムに着目して一次エンドポイント/二次エンドポイントをテーマにやっていきます。