ランダム化比較試験の読み方・注意点を引き続きまとめてみます。
前回記事はこちら
ここまでは知っておきたいランダム化比較試験の読み方① – 脳内ライブラリアン
今回は「患者の選出」 と「ランダム化」の部分についてです。
目次:
患者の選出基準をみる
「RCTの対象となる患者層がどのようなものか」は実際の患者さんに試験結果の適応を考えるうえで大変重要です。たいていの場合inclusion criteria/ exclusion criteriaが書いてあるので、それが自分のみている患者さんの層と本当に一致するかは、そのRCTで用いられた治療をする際に確かめておく必要があります。
多くの論文ではtable 1あたりにpatient dataがまとめられています。そこで年齢、性別、合併症の有無、疾患の重症度など基本的な情報+その疾患の予後規定因子が示されていることが普通なので、代表的な値が自分の患者層と乖離がないかもみておくとよいと思われます。欧米のstudyをみていると「BMIが日本に比べてやたら高い」とか「アジア人はほぼない」とか言うことがいつも気になります。そういう点で日本のstudyであればその辺りは心配がいらなくなります。
ランダム化と盲検
ランダム化比較試験の一番重要な特徴は、患者さんをランダムにコントロール群と介入群に振り分けていることです。
観察研究(observational study)では患者さんの既知の予後規定因子をできるだけそろえるように調整することはできますが、未知の予後規定因子や交絡因子を十分にそろえることができません。「観察研究では効果があったのにランダム化比較試験では否定された」エビデンスも多くあります。
こうしたすべての予後規定因子をコントロール群・介入群でバランスがとれるようにするのがランダム化比較試験なので、それがきちんとできているかは、みないといけません。先ほど述べたtable1あたりにあるpatient dataをみると、それぞれの群でデータの中央値が書かれているものもあります。ちゃんと各群で明らかな差がないかどうか確認することができます。
ちなみにですが、ここで有意差を用いて2群の違いを検証している論文もありますが、これは統計的にはあまり意味がありません。というのも、症例数が多ければ細かな違いで有意差が出てしまう可能性があるからです。きちんとランダム化されていれば、仮にこの差が出ていたとしても臨床的に意味のある差ではなく、調べる意味が特にないのです。
また、ランダム化したうえで大事になるのは盲検がどこまで徹底されているか、ということ。最も良いのは以下の全てで盲検がされていることです。
- 患者
- 医師
- データ収集者
- アウトカムの判断者
- データ分析者
いずれかの盲検がかけていても、結果に影響を及ぼし得るため、全てできているかどうかは確認の必要があります。
内服アドヒアランスの問題
内科系の論文だと介入群で薬剤の内服をする試験が結構ありますが、ここで問題になるのはアドヒアランスの問題です。要するに試験に参加したはいいけれど、内服をきちんとしていない人がいると当然ながら試験結果に影響が出ます。治療薬に効果があったとしても、飲んでいないので当然効果が出ず、結果として見た上の治療奏効率は下がります。
しかしながら、ちゃんと効果をみるために、こういった「内服アドヒアランスが悪い人」人をexclusion criteriaに入れて除外してしまうのはデメリットがあります。これをやってしまうと、実際の臨床現場でも存在しうる状況が除外されてしまい、奏効率が過度に良くみえてしまいます。さらには、ランダム化されたあとにこういったことが行われると、介入群に偏ってこれがされた場合に、せっかくのランダム化した均衡が崩れてしまう可能性があります。
例えば、以前読んだ高血圧の内服試験では予め内服を遵守できるか確認できる期間を設けて、できなかった人を除外しているものがありました。薬剤などの結果を純粋に確かめる目的ならこれも良いのですが、実臨床に応用するうえでは、数値が過度によくみえている可能性に注意が必要です。
(2021.06.28追記 医学論文の読み方関係の記事はこちらにまとめました)
参考文献:
週刊医学界新聞のこちらの連載は結構勉強になりました↓
医学書院/週刊医学界新聞(第2825号 2009年04月06日)
未読ですが本も出されているようです。
前回同様に主にはこれを参考にしています。お勧めです。
邦訳版はこちら
こちらも参考にしました。ざっと統計を学ぶうえでお勧めです。
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