前回記事に続いて急性期脳梗塞の臨床試験の解析方法の話をします。
前回記事はこちら
急性期脳梗塞の臨床試験の解析方法が分かりにくすぎるので、勉強した話①【順序ロジスティック回帰分析】 – 脳内ライブラリアン
なぜ前回解説した順序ロジスティック回帰分析のような特殊な解析方法をしていくに至ったのか、こちらのreview articleを参考にして説明していきます。
目次:
過去の急性期脳梗塞の臨床試験における解析方法
古典的な脳梗塞の解析方法は結果を2値変数として解釈するものでした。
例えばmodified Rankin Scale(mRS)でいえば、mRS 0-2(予後良好) vs 3-6(予後不良)の2群に結果をわけて、解析するような方法です。
アルテプラーゼの投与時間を3→4.5時間以内に拡大させ、我々の仕事量を増やしたECASS-3 trial(2008)なんかがこの例にあてはまります。
この解析方法だと解釈も非常に単純で、どれだけmRS 0-2の人が増えたかが分かりますし、Number Needed to Treat (NNT)も簡単に算出することができます。
しかしながらこの方法には3つ問題があります。
問題点①細かいスケールの違いを検出できない
mRS 0-2 vs 3-6とすると、例えばmRS 2になるはずだった人が治療によって0に改善した場合だとか、mRS 6だった人が3に改善する場合が検出できません。
つまり、体が不自由になったかもしれない人が全く症状を残さない場合や死亡するかもしれなかった人が後遺症も残しながらも生きられる場合というのを一部考慮してないことになります。
これは治療の効果といっても差し支えない部分であり、結構大きな問題ではないでしょうか。
問題点②検出力が低い
治療によってmRS3-6になるはずだった人が、0-2に改善している場合のみを考慮するため、1ポイントの違いは3→2の場合のみしか考慮されず、イベントの検出力が低いことが問題です。そうなると、必然的に被験者を増やさないといけないので、試験の結果を出すのに負担が大きくなります。
問題点③転帰悪化群を考慮しにくい
tPA治療も血栓回収治療も出血などを起こして転帰が悪化する可能性はあります。 mRSの2値の変化のみに着目していると、改善した群がいながらも、実はmRSが悪化した群が同時に結構存在しているかもしれません。そこを考慮できない点も問題となります。
新しい3つの解析方法
そこでreviewで紹介されているのが①global statistic, ②responder analysis, ③shift analysisの3つの方法です。
新しいといっても2007年の論文なので最早ガンガン使われているわけですが、、、この頃から徐々に変わっていったのだろうと思います。
次の記事でみていきます。
続きはこちら
急性期脳梗塞の臨床試験の解析方法が分かりにくすぎるので、勉強した話③
(2021.06.28追記 医学論文の読み方関係の記事はこちらにまとめました)
参考文献:
Saver JL. Novel end point analytic techniques and interpreting shifts across the entire range of outcome scales in acute stroke trials. Stroke. 2007;38(11):3055-3062. doi:10.1161/STROKEAHA.107.488536
Bath PM, Lees KR, Schellinger PD, et al. Statistical analysis of the primary outcome in acute stroke trials [published correction appears in Stroke. 2012 Sep;43(9):e100]. Stroke. 2012;43(4):1171-1178. doi:10.1161/STROKEAHA.111.641456
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