急性期脳梗塞の臨床試験の解析方法が分かりにくすぎるので、勉強した話③

前回記事で過去の急性期脳梗塞の臨床試験の問題点について、みてみました。

急性期脳梗塞の臨床試験の解析方法が分かりにくすぎるので、勉強した話② – 脳内ライブラリアン

 

次に↓のreview articleで紹介されている、問題点を解決するための解析方法について説明してみます。

Novel end point analytic techniques and interpreting shifts across the entire range of outcome scales in acute stroke trials – PubMed

 

①global statistic, ②responder analysis, ③shift analysisの3つの方法です。 

 

目次:

  

 

global statistic

mRS, NIHSS, Barthel indexなど複数の指標を組み合わせて、評価していく方法です。複数の数値化された指標をみることで、問題点①で挙げられていた細かい変化に対しても気づくことができることが利点です。問題点②の検出力の問題もクリアされています。

 

ただ、数値的な変化のみをみていくため、臨床現場での解釈に困り、結局のところリスク・ベネフィットがどれくらいなのか測りかねるというデメリットがあります。例えば「試験の結果から新しい治療はmRSが0.38点減らすことができることが分かった」と言われても、mRS 0.38点ってどう解釈すればいいんだろう、となってしまいます。

 

responder analysis

これは疾患の重症度などの背景を絞って、改善した人にのみ目を向ける方法です。あらかじめ重症となることが分かっている人に対して治療を行い、良くなったアウトカムのイベント数に着目します。うまく予測ができていれば問題点②の検出力の問題をクリアできます。

 

この方法は重症となる指標がある程度統計的なデータが揃っていないと予測が難しい点がデメリットとなります。また、問題点③で指摘した悪化している人の場合をカバーできていません。

 

shift analysis

shift analysisは改善、悪化の全ての方向への移動を考慮しており、おそらく最近のstudyでは最もよく使われているのではないでしょうか。初回の記事で紹介した順序ロジスティック回帰分析もここに含まれます。

 

mRSの例でいけば、全てのmRSのスコアへの移動を考慮しているため、問題点①の細かい変化もデータに含まれており、さらに細かい変化も含むことで問題点②の検出力の問題もクリアできます。加えて、問題点③の悪化している人もデータとして含むため、過去の解析の問題点をことごとくクリアしているようにみえます。

 

しかしながら、デメリットとしてその計算方法の複雑さと結果の解釈がしにくい点が残ります。

 

mRSならまだ良いんですが、NIHSSのような40点満点の指標だと、計算方法も煩雑なうえ、NIHSSが1点分変化する確率のオッズ比がどうこうと言われても臨床的な意味が解釈しにくいです。

 

それぞれの解析方法による結果の解釈

以前から用いられている被説明変数が2値変数の場合は比較的分かりやすく解釈することができます。前回記事で書いたとおりNNTも出すことができるので、何人治療したらmRSが3-6の人が0-2に改善するのか、といったことを想像することができます。

 

ただ、たいていの場合、mRS 0-2 vs 3-6以外に、0-1 vs 2-6など色々なパターンの結果が載せられていて、一番いい値に注目してしまう”impact bias”がかかってしまう点には注意が必要です。

 

これに対してshift analysisは解釈がしにくいです。実際出てくる指標は共通オッズ比なのですが、これが少数の人がすごく良くなったことで出た数値なのか、多数の人が少し良くなって出た数値なのかが実は区別できないのです。

 

そのため最初に紹介したreviewの著者は以下の4つの指標を推奨しています。*1

(1)the trial data specified minimum possible value for the NNT

(2)the trial data specified maximum possible value for the NNT

(3)individual expert judgment of the biologically most plausible NNT

(4)individual expert judgment of the biologically most plausible NNH

 

つまり、NNTの最大・最小値と専門家からみてそれっぽい値(+NNH: 有害事象)を書いてよ、ということですね。

 

実際これはあまり書いていないような気もしますが、、、。確かに実際に臨床で使用できるような指標が欲しいところではあります。

 

ここまでがざっと調べた範囲で分かった急性期脳梗塞の臨床試験についての話です。臨床で脳梗塞に取り組まれている医師は、疾患の数も多いので非常に多いと思うのですが、解析方法がどうも理解しがたいのは困ったところな気がします。もし記事で誤っているところがありましたら、より詳しい方ご指摘をお願いいたします。

 

(2021.06.28追記 医学論文の読み方関係の記事はこちらにまとめました) 

medibook.hatenablog.com

 

参考・引用文献:

1. Saver JL. Novel end point analytic techniques and interpreting shifts across the entire range of outcome scales in acute stroke trials. Stroke. 2007;38(11):3055-3062. doi:10.1161/STROKEAHA.107.488536

2. Bath PM, Lees KR, Schellinger PD, et al. Statistical analysis of the primary outcome in acute stroke trials [published correction appears in Stroke. 2012 Sep;43(9):e100]. Stroke. 2012;43(4):1171-1178. doi:10.1161/STROKEAHA.111.641456

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