今回は問4、指数分布の問題ですね。
この問題は指数分布モデルにおいて臨床試験で必要とされる症例数計算なんかの話と結びついており、ネット上に同じ話を論じている南山大学のPDFがあったので、参考になるかもしれません。
http://www.st.nanzan-u.ac.jp/info/gr-thesis/2013/10se101.pdf
ただ、パラメータがこの問題の逆数となっているので、ちょっと解答も異なる点に注意が必要です。
では、(1)から。
前問と同様にまずは尤度比検定を求めます。
ここで
\[
\left(\frac{\lambda_0}{\hat\lambda}\right) < 1
\]
より単調減少となるので、先程の不等式をさらに簡便にすると
\[
\left(\frac{\lambda_0}{\hat\lambda}\right)^n \exp\left(-\frac{\lambda_0}{\hat\lambda} n\right) > C’
\]
となります。
この式はよく見ると \( \chi^2 \) 分布の形を持っています。そこで両辺の対数をとって変形し、尤度比検定の棄却域を求めます。
\[
n \left(\frac{\hat\lambda}{\lambda_0} – \log \frac{\hat\lambda}{\lambda_0} – 1 \right) > C”
\]
このような形に変形できるので、帰無仮説の分布を考えると、棄却域の基準値として \( \chi^2_{1, \alpha} \) の分位点を利用することで、最終的に
\[
n \left(\frac{\hat\lambda}{\lambda_0} – \log \frac{\hat\lambda}{\lambda_0} – 1 \right) > \chi^2_{1, \alpha}
\]
という形になります。
この関係を利用して、スケール変換を行うことで、尤度比検定の式をカイ二乗分布に従う形に変形できます。
まず、先ほどの分布関係式
\[
\frac{\lambda_0}{n} \sum x_i \sim Ga(n, \frac{1}{n})
\]
を変形して、自由度 \( n \) のカイ二乗分布に変換します。
カイ二乗分布は以下の性質を持つので、適切にスケール変換を行います。
\[
\chi^2_n \sim Ga\left(\frac{n}{2}, 2\right)
\]
この関係を利用して、尤度比検定の式をカイ二乗分布に従う形に変形すると、
\[
2 \lambda_0 \sum x_i \sim \chi^2_{2n}
\]
となります。
したがって、検定の棄却域は
\[
2 \lambda_0 \sum x_i > \chi^2_{2n, \alpha}
\]
となり、自由度 \( 2n \) のカイ二乗分布の上側分位点を閾値として棄却を行います。
という形を取りますので先程の式を変形して
\(2\lambda_0\sum x_i\sim Ga(n, 2)=\chi_{2n}^2\)
となります。
あとは有意水準アルファの棄却域を考えます。まずは
\(\lambda_0=\lambda\)
を帰無仮説とした場合、尤度比検定の不等号の向きに注意して
\(2\lambda_0\sum x_i\lt\chi^2_{2n,1-\alpha}\)
が棄却域となります。
続いて、前の問題と同様に帰無仮説を拡大して
\[
P(2\lambda_0\sum x_i\lt\chi^2_{2n,1-\alpha}) \\
= P\left(\frac{\lambda_0}{\lambda} 2\lambda\sum x_i\lt\chi^2_{2n,1-\alpha}\right) \\
\leq P(2\lambda\sum x_i\lt\chi^2_{2n, 1-\alpha}) \\
=\alpha
\]
となり、確率上界の確認ができました。
最後に(3)
検出力を求める問題です。
検出力は定義として「対立仮設下において棄却域に従う確率」でした。よって、検出力
\(\beta(\lambda)\)
は先程の棄却域を少し変形して
\(\beta(\lambda)=P\left(2\lambda\sum x_i\lt\frac{\lambda}{\lambda_0}\chi^2_{2n,1-\alpha}\right)\)
となります。一応これで解答として良いように思いますが、公式の解答ではここから検出力の値域を調べています。
\(\lambda_0=\lambda\) の時、検出力は α となります。
また、\(\lambda\) が増加していく時どうなるか。先程の不等式の右辺に注目すると、\(\lambda\) が増加すれば大きくなっていくのが分かります。すると左辺の検定統計量が不等式を満たす確率は増えていくので、検出力 \( \to 1 \) へと近づいていきます。
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