Σ(シグマ)計算を使った式の変形問題は、統計検定でも結構出ています。
公式を1個1個は理解しているのですが、果たしてどこをどのように変形していけばいいのか、分からなくなることが個人的には多いです。
もともと数学出来る人というのは、こういう変形ではあまり困らないかもしれません。ただ、そういった人も結局は問題を解くことを通じて、経験的にどうすればいいのかが分かっているのではないかな、と思います。
そこで、統計検定の過去問と現代統計数理学の基礎の問題を通して、その変形のよくある例とtipsを見てみます。Σの記号の特性とか公式を論じるつもりはないので、ご注意ください。
目次:
数理統計の問題でよくみられるΣの使われ方
まずどういう使われ方で現れるかと言えば、主には標本平均・分散を問う問題でしょう。
超基本的な話ですが、標本平均やその期待値と分散、不偏分散についてみてみます。これも問題としては序盤で出てくることがありますね。
母集団から得られた標本をとする。母平均を、母分散をとします。
標本平均は
であり、期待値をとると
標本平均の分散は
標本分散は
不偏分散は
となります。あとで証明を例題として書きます。
よくみられるのは
のような感じの変換でしょうか。
不偏分散の導出の際にも使われています。
もう1個、形としてよくみるのは
という使われ方ですね。
自分みたいに数学的理解度低めな人は、良く分からなくなったら、とりあえず和の記号をばらして考えるのも良いと思います。
ばらしてみるとよくわかりますが
となります。
また、もう一つよく使われる変形として、期待値は加法定理が成立するので
というものもあります。
これらの特性は分かっていながら問題が解けない場合は、練習が必要です。統計検定の過去問を中心に実際解く流れを確認してみます。
例題①:不偏分散の導出
が母分散の不偏推定量であることの証明です。この数式の期待値が母分散に一致することを示してみます。
ここでは、先ほどと同様の前提条件で母集団から得られた標本をとし、母平均を、母分散をとします。
ちなみに、2015年の統計検定1級の過去問でも同様の問題があるので、覚えておいた方が良いと思います。
まず定数項をはじき出して、展開します。
和の記号は期待値の外に出すこともできますが、前回の例題でもみたようにという組み合わせは、変形することができるので相性が良いのです。先に和の記号の計算を入れます。
であり
また を利用して
\(\frac{1}{n-1}E[\sum(X_i^2-2X_i\bar X+\bar X^2)]\\=\frac{1}{n-1}E[\sum(X_i^2)-2n\bar X^2+n\bar X^2]\\=\frac{1}{n-1}E[\sum(X_i^2)-n\bar X^2]\\=\frac{1}{n-1}(\sum E[X_i^2]-nE[\bar X^2])\\=\frac{1}{n-1}\{n(\mu^2+\sigma^2)-n(\mu^2+\frac{\sigma^2}{n})\}\\=\frac{1}{n-1}(n-1)\sigma^2\\=\sigma^2\)
これで証明ができました。
次の記事でも過去問との関連問題を中心にみていきます。
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