今回は「妨害する、妨げる、中断する、邪魔をする」といった意味で使われる動詞をまとめてみました。結構たくさんの動詞があり、ぱっと見で自分には違いがはっきりわかりませんでしたので今回は大量となっております。
また、こうした学術英語・論文英語やTOEFLで出てくる英語を使えるものにすべく毎日twitterでも英語表現をつぶやいていますのでご興味ある方はどうぞ。
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単語の意味と共起表現
disturb
to interrupt what someone is doing
to move or change something from its usual position, arrangement, condition, or shape
“disturb”は「妨げる」とも訳されますが、日本語訳で「乱す」という意味もみられるように、もともとの状態であれば落ち着いて安定したもの(usual position, arrangement, condition, or shape)を変えてしまうという意味を持ちます。そのため目的語に取る単語も元々調和がとれたものであることが多いです。
例えば
peace, harmony, equilibrium, tranquility, balance
などですね。
disrupt
to prevent something, especially a system, process, or event, from continuing as usual or as expected
さて、それに対して”disrupt”も「妨げる」という意味を持ちますが、こちらが対象とするのは元々何らかの流れがあるもの(a system, process, or event, from continuing as usual or as expected)になります。
目的語の例としては
flow, rhythm, traffic, communication, functioning
などですね。いずれも確かに何らかの流れを持ったものです。交通関連も流れに例えられることが多いので、disruptが適しているのではないでしょうか。
最近の例でいくとこんな感じですね
The Russia-Ukraine war is severely disrupting shipping and air freight.
(Russia-Ukraine war: impact on shipping, ports, air freight)
車、電車、船など基本的には流れがあるものを遮るというイメージです。
interrupt
to stop someone from speaking by saying or doing something, or to cause an activity or event to stop briefly
流れを遮るという点では”interrupt”は”disrupt”と非常に似通ってますが、もうちょっと小規模なイメージでしょうか。原義でも最後にbrieflyとついています。
目的語として取る名詞は
flow, thought, ceremony, conversation
などもうちょっと日常に則した単語であるように思います。
この辺りについては以下の記事も参考になります。disruptの方が「かき乱す」といった意味でネガティブな感じがあるようです。
邪魔する、妨げるのdisturb / interfere / interrupt / disruptの違い | ネイティブと英語について話したこと
interfere
to involve yourself in a situation when your involvement is not wanted or is not helpful
さてちょっとここまでとは毛色が異なるのが”interfere”です。求められてはいないのに影響を与えあってしまうような場合に使われます。科学関連の日本語訳としては「干渉する」がぴったり当てはまることが多いのではないでしょうか。語尾の”-fere“は”strike”と同じ語源で「互いに殴り合う」というところから来ているようなので、お互いにばしばし影響しあっている感じなのかもしれません。
なお、”interfere”は自動詞のため、目的語をとるにはwithもしくはinが必要となります。
目的語として取る名詞としては
election, government, right, ability
など政治関連の単語が見受けられます。
impede
to make it more difficult for something to happen or more difficult for someone to do something
“impede”は何かをするのを止めるようなイメージです。これも目的とする名詞をみるとイメージが湧きやすいかもしれません。
例えば
progress, flow, functioning, recovery, growth, advance, innovation, development
などです。一方向に進もうとしているのを邪魔して止めるような感じでしょうか。この後に出てくるhinder, hamperはこのイメージに近いです。
hinder
to limit the ability of someone to do something, or to limit the development of something
こちらも何か進んでいこう、発展しようとするものを抑えるようなイメージです。古い英語ではhold backとほぼ同様の意味であったようで、掴んで離さない感じですかね。
目的語としてとる名詞としては
advance, progress, development, communication, movement
などでimpedeと似通っています。
hamper
to prevent someone doing something easily
こちらも何かしようとする行動を抑えるイメージです。「囲い込む(enclosureとも類似)」がもともとの意味で、そこから「妨害する、邪魔をする」という意味となったようです。そのため、囲い込むという意味から以下のようなカゴのことも”hamper”と呼びます。
原義にもあるように、本来はそこまで大変でないはずのものがhamperされることによって、困難になってしまう、という意味合いがあります。
例えばCambridge Dictionaryの例文で
“Fierce storms have been hampering rescue efforts and there is now little chance of finding more survivors.“
とあるのですが「激しい嵐によって救助のための努力/労力が妨げられる(ことによって生存者を見つける可能性が低くなってしまう)」という意味になります。本来はもう少し簡単に救助ができるはずができなくなってしまう、ということですね。
目的語としては
progressなどに加えて、mobility, creativityのような一方向というよりいろんな方向に動きそうなイメージのものに対しても使われます。
(単語の意味・語源はこちらから引用Cambridge Dictionary | English Dictionary, Translations & Thesaurus ,ハイパー英語語源辞書, Dictionary.com | Meanings and Definitions of Words at Dictionary.com)
(勉強の方法はこちらを参照中級者から上級者になれる着実な英語の勉強法『英語独習法』レビュー – 脳内ライブラリアン)
医学論文を含めた用例
さて、ここからは医学論文の例を見ていきます。
disturb
Seizures in temporal lobe epilepsy (TLE) disturb brain networks and lead to connectivity disturbances.
J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2017 Nov;88(11):925-932.
側頭葉てんかんが脳のネットワークを乱す、わけですね。正常の構造を妨げるという意味で使われています。
Acute stroke can disturb central autonomic control, resulting in myocardial injury, electrocardiographic abnormalities, cardiac arrhythmias, and ultimately sudden death.
Lancet Neurol. 2012 Feb;11(2):179-88.
こちらも同様で、正常な自律神経のコントロールを阻害するわけです。正常な機能があるものを前提にしています。disruptでも良さそうな気もします。
disrupt
In animal models, exogenous cannabinoids disrupt these important processes and lead to cognitive and behavioral abnormalities.
Stroke. 2022 Apr;53(4):e176-e187.
外的なカンナビノイドが重要なプロセスを妨げる、ということでプロセスという「一連の流れがあるものを妨げる」という意味でdisruptが使われます。
These findings appear to highlight the need to develop epilepsy disease-modifying treatments to disrupt or slow ongoing atrophy.
JAMA Neurol. 2019 Oct 1;76(10):1230-1239.
進行するatrophyを止めるという意味でdisruptが使われます。これはある方向に進んでいくものを止めるという意味なのでdisruptが合っていそうです。
interrupt
In the intent-to-treat group, the decision was made to continue or interrupt natalizumab after 24 doses.
JAMA Neurol. 2014 Aug;71(8):954-60.
臨床試験における一時的なナタリズマブの中断ということで、interruptが当てはまります。disruptほど大きな影響の出るものではなく、長期間でもない、というところがポイントなのでしょう。
Vagal nerve stimulation (VNS) therapy affects respiration during sleep and can interrupt sleep.
Neurology. 2003 Oct 28;61(8):1126-9.
睡眠を中断する、妨げるという場合も日常的な小さな場面での話ですのでinterruptがしっくりきます。
interfere
Participants who were taking a prescription Alzheimer medication or had a current serious or unstable illness that could interfere with the study were excluded.
JAMA Neurol. 2021 Feb 1;78(2):229-235.
これもexclusion criteriaについて書かれたときに結構見ますが、研究の結果に影響の出るような薬を使っている被験者は避ける、という場合にinterfere withと使います。薬の影響が試験の結果に干渉してしまうわけですね。
External factors, including systemic inflammation and obesity, are likely to interfere with immunological processes of the brain and further promote disease progression.
Lancet Neurol. 2015 Apr;14(4):388-405.
こちらも免疫的なプロセスに対して影響をする、干渉するという意味でinterfere withが使われています。
impede
Proximal middle cerebral artery (MCA) occlusions impede blood flow to the noncollateralized lenticulostriate artery territory.
Stroke. 2021 May;52(5):1570-1579.
impedeは一方向に進む流れを止めるという意味でしたが、血管の閉塞が物理的に血流を妨げるという意味でここでは使われています。
Shoulder pain is a common complication after stroke that can impede participation in rehabilitation…
Stroke. 2013 Nov;44(11):3136-41.
These events have a substantial effect on the final outcome of patients with stroke and often impede neurological recovery.
Lancet Neurol. 2010 Jan;9(1):105-18.
リハビリや回復していくものの邪魔をする、という意味でもよく使われています。この辺りは以下のhinder, hamperと共通します。
hinder
Stroke disrupts neuronal functions in both local and remotely connected regions, leading to network-wide deficits that can hinder recovery.
Stroke. 2021 Jan;52(2):687-698.
Current standards of research and clinical practice are influenced by an underexplored range of biases that may hinder acute stroke care for persons with disability.
Neurology. 2020 Feb 18;94(7):306-310.
recoveryといった回復を邪魔するという意味で用いられています。Googleでdisrupt recoveryと検索すると経済の話であったり、もっと規模が大きいものを対象として使われそうなので、個人の回復を妨げるという意味ですとhinderの方が合う感じのようですね。
hamper
The lack of comparative evidence and data on clinical effectiveness hamper the assessment of therapeutic value and place in therapy of drugs approved for MS….
Neurology. 2018 May 22;90(21):964-973.
Stroke can cause death, disability, and hamper quality of life.
Lancet Neurol. 2010 Nov;9(11):1085-96.
These results indicate that, even if dysphagia itself is not responsible for much excess mortality in acute stroke, it might still lead to complications which hamper functional recovery.
J Neurol Neurosurg Psychiatry. 1989 Feb;52(2):236-41.
hamperはもう少し幅広くassessment, QOLといったところも目的語として使われています。この辺は流れがあるものでもなければ、安定した状態があるものでもないので、hamper,hinderあたりが良いのでしょうか。
まとめ
では、今回紹介した動詞のイメージをまとめてみたいと思います。
disturb – もともと安定しているものを妨げる、乱す
disrupt – 流れのあるシステムを妨げる
interrupt – 流れのあるものを(短期間)中断させる
impede – 一方向に進んでいくものを妨害する
hinder – 発展しようとするものを妨げる
hamper – 囲い込んで邪魔をする、簡単にできたはずのものを邪魔する
といった感じでしょうか。
図にしてもまとめてみます。
病気というのは良い状態を邪魔するものに対していかに対処するかという話が多いので、これらの動詞はbackground, methodsでも汎用性が高いですね。ぜひうまく使い分けたいところです。
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